316話 ???~布教活動と夕飯と、おにいさんといっしょ
「?兄さん?」
兄さんが屋台の端でレクムシュケの液片手に何かしていた。
「…やはりか」
「え?何が?」
「コイツを一度凍らせた後ならお湯で割っても問題無く醤油だ」
兄さん天才か!?
うん。ちょっと現実逃避した。
実は今、ちょっとしたパニックになっています。
それは皆さんそれぞれ食べて、反応は良いんですけどね…美味しいという言葉が無いのか「これは良い!」「これは好きだ!」と言っている。
ただ、全員何故か「神の所業」と言い始めている。
───あのぅ…歩道から人があふれ出ていて、車道?車では無いけどフローカート?の邪魔になっているようですが…
そんな事を思いながらも僕はもち麦団子と同時並行でうどんを作っている。
最近は特に技のキレが良い。時間加速モドキをしても全然平気。
そしてなんと兄さんがレクムシュケの液ベースのめんつゆを作成した。これは勝てる!
「兄さん凄いよ…僕冷やすは思いついても凍らせるまではしなかったと思う」
「まあ、俺も友紀の調理を見て思いついただけだ。自慢の弟の成果だよ」
「じゃあ僕と兄さんの成果だね!」
「そうだな」
「ああっ…神兄と神弟の兄弟愛っ!そして食の新たなる普及!私達は今神話に立ち会っている…」
いや、お姉さん?泣きながら膝をつかないで?って、他の人達も祈らないで!?あなた方の神様は柱の上のお社でふてくされて寝ていますよ!?
うどんも大盛況で、レクムシュケが厄介者から実は凄いモノに再認識された。
あと、もち麦の普及もしたし、調理方法等を簡単に教えたので…あ。
打ち粉使ってないし熟成の概念が…まあ、うん。
ここの女神様のことを説明出来たことでヨシとしよう。
「友紀。夕飯は俺が作ろうか?」
「良いの!?兄さんのご飯食べたい!」
「何が良い?」
「えっと、えっと…カルツォーネとか、あの揚げない油淋鶏とかっ!」
「分かった分かった。あーあの神域で作ろうか?」
「あ、そっか。材料…」
「お休みだろ?わがまま言って良いんだぞ?」
「…うんっ!お願いっ!」
「えっ?妾の分は?」
「笹でもどうぞ」
「笹て…それ辛いヤツぅ…」
女神様が兄さんと何か言っていたけど、そんな事よりも兄さんのご飯!
僕の頭にはそれしかなかった。
「ふわぁ…美味しかった…カルツォーネ…肉そぼろ入れたり…兄さんみたいに具材レベルまで熱を通す技術が欲しい…」
久しぶりにお腹いっぱい食べた。
最近皆に食べて貰うって僕はほとんど味見レベルだったからなぁ…アレ?
───どうして僕それだけしか食べなくても大丈夫なんだろう…倒れるよ?普通。
「どうした?」
片付けを終えた兄さんが居間に来た。
「僕、最近確り食べてないなぁ…って」
「無自覚神は…半神状態だから最低限の食事でも問題が無かったんだろうな」
「ええっ!?そんなぁ…」
「お前が夜中まで作業して早朝に起きるなんて事を平然としていられるのもそのせいだぞ?今まで夜9時には寝ていただろ?」
そう言われて「ああ」と納得してしまった。
声、いや、言霊の制御にエネルギーや運動神経持って行かれているからと思っていた。
「そろそろ体も動かさないとな?昔みたいに動き回れるはずだろうし」
「うーん…ソレは何となく違う気がするんだ」
「と言うと?」
「なんかまだ引っかかっている感じ?」
「まだ、か。まあ声は戻ったし時間はあるんだ。今はそれでよしとしておこう」
「うん」
僕は兄さんをジッと見る。
「どうした?」
「お布団敷いて、一緒に寝よ?」
「昔みたいに?」
「昔みたいに!」
「そうだな。よい子は寝る時間だし、寝るとするか」
「僕もう大人だよ!?」
「俺からしたら可愛い弟だ」
「……寝る」
「良い子だ」
なんだか兄さんに揶揄われている気もしたけど、いいもん!寝る!
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