1056話 天之御中主様ゲットです!
日没スル所で働いている僕から日出ル所に帰る僕に送る。恙なきや───
いいえ、修羅場です。
酒カス軍団が僕の帰りを待っているんだもん。
あっ、
「天之御中主様見付けました!」
「やあ、試飲会に来たんだけど…」
「確かに特製の日本酒を受け取りましたが誰にも言ってませんし、そもそも試飲会をするとすら言ってませんが?」
「…えっ?………ええっ!?」
あっ、騙されてきたんだ…
とりあえず逃がさないように第2スタジオへご招待した。
「いやぁ…別に延命は要らないよ?今を精一杯生きて楽しく酒を飲んで逝けたら良いのさ。権能も各所に引き継ぎ完了しているから。あっ、あと長くて1年だから」
穏やかな微笑を浮かべ天之御中主様は自身のタイムリミットを事もなげに答えた。
「新しいお酒とか出てくるかも知れないのに諦めるんですか?」
「まあ、ね。寂しいと言えば嘘になるけれど、神が生命の終焉の模範を見せずに誰が見せるんだい?」
「そもそもその終焉は誰も見る事ができないんですが?」
「ははは…言うねぇ」
本当にこの
「あんなに回復したのにもうかなり弱っているじゃないですか…」
「穴を塞ぐのは結構力が要るからね。ちょっと疲れがね」
椅子に座り小さく息を吐くその姿は端から見たら疲れているようにすら見えないだろう。
しかし、その神体のほぼ全てが残滓に覆われている。
「除去出来て10~15%位じゃないかな?」
「それでも「ある一定以上超えるとね、死んだ方が良いって思う位キツいんだ」」
天之御中主様は僕の台詞を遮り、静かに話し出した。
「息苦しさや倦怠感、内部から蝕まれていくのが良く分かるんだ。ただ、そこから更に進行すると痛覚が死ぬのか分からないけど、楽になる。
今まで何だったのかという位にね…そこで死の宣告が下される。大体あとどれ位しか保たないってね。そうなったら大急ぎで世界を閉じたり引き継ぐ準備さ」
深い息を吐き、こちらを見る。
「引き継ぐものは引き継いだ。あとの余生くらい好きにさせて欲しいんだ」
「その好きに生きるのがお酒と、人のための活動ですか?」
「そうさ。最近の人の世は面白い。制限がある中で楽しく生きている。ロクデモナイ連中はそこそこ居るけれど、一線を越えるような連中は君の兄さんがある程度駆除してくれていたしね」
「……」
「どうかしたのかな?」
「天之御中主様。現在、人は欲の概念を人質に取られています」
「他化自在天の件かな?世界彼方此方には欲に関する神が居るから問題無いよね?」
「…残念ながら、全方位型の神は殆ど…」
僕の台詞に一瞬呆けた顔をし、直ぐに眉を顰めて呻いた。
「…あぁ、だから他の神々の動きが鈍かったのか…やられたなぁ…」
天井を見上げてぼやく天之御中主様に僕は首をかしげる。
「神々もね、欲望を制御されていたってことさ。そうか…複数の神がその力を弱めて意味も無い満足感を与えて退かせていたのか」
あの、天之御中主様?わかりやすいように教えてくださいませんか?
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