1057話 天之御中主様のぱーふぇくとがいねんきょうしつ
「例えば死を司る神が居る。その神は死を司る唯一神であったとするけど、その神が殺された場合、その世界から死の概念が消える。これは世界全体にだよ?」
「全員が不死になる、ですよね?」
前に習いました!
「そうそう。ただね、これにはもう一つあってね…それは消滅だ」
「えっ?」
消滅は、死ではない?どういう事?
「それはそうだろう?その世界の概念であってその世界が無くなればそれは消滅だ」
ああ、そういう事か。
「同じように今回は欲を司る神々がその力を使っている訳だ。単独では神々に対し通用しないが、恐らく複数の同系統の神がその権能を使っている。
そうすればこの世界の”欲”の概念は掌握出来るからね」
そう。
この世界の欲の概念は掌握出来る。
つまりは掌握されていたんだ。
ただ、例外があった。
この世界由来では無い神、そしてこの世界の理を逸脱した者。
つまりはゆる姉様、ミツルギ姉様、そして放浪神からこの世界の創造神となった一柱、天之御中主様の三神と兄さん。
そして別世界の神となり軛から外れた私。
───そうか。だからそれが分かったから態々あんな電話を掛けてきたのか。
「…この世界を創造した一柱の天之御中主様。お願いがあります」
「何かな?」
僕の言葉に天之御中主様は微笑を湛えながら応える。
「僅かな間でも構いません。代役は可能でしょうか」
「…っ、は…はははは!うん、君は本当に凄い子だよ!」
本当に、心からおかしそうに笑い出す天之御中主様。
「だた、私にお願いするのは…凄い対価が必要だよ?」
「どのような対価でしょうか」
「そうだねぇ…今回届けられたお酒の第1試飲権と、君の所で少し寝かせた熟成酒の試飲権かなぁ?」
そう言って立ち上がる。
「さあて、暫くは忙しくなりそうだ。ああ、欲を司る神の後任は私が立てるから心配しないで欲しい」
それだけ言うと天之御中主様はフッといなくなった。
───敵わないなぁ…空間封鎖してもそこから普通に抜けられるなんて…
私は小さく息を吐き、今まで居た空間に深々と一礼して箱庭へと戻った。
箱庭に戻ると、何やら騒がしかった。
「どったの?」
近くにいたメイドさんに声を掛けるとなんだか凄くホッとした顔をされた。
「ああ!ご主人様!先程白城様から緊急連絡が!」
「えっ?何事?」
「ダンジョン内に高次元生物反応があるそうです」
待って?
ルール違反どころの話じゃないと思うんだけど!?
「ダンジョン側が自身に科したルールをねじ曲げた?いや、そもそもそんなルールを明示したわけじゃないけど…ぇえー?」
「現在支援要請によって重装救命官4名と護衛士官2名を派遣致しました!」
「重装救命官は追加で8名送って!メリアさんは?」
「現在司令室で他の仕事を…」
「廣瀬お姉さんに連絡してメリアさんの仕事を受け持って貰って!そしてメリアさんは直ぐに白城さんと合流!」
高次元生命反応と白城さんが態々言ってくる時点で色々マズイのだろう。
もう一手欲しい…
「ちーくん!白獅子で派遣しても良い子はいる?」
僕の問いに頷くと離れた所で寝転がっていた白獅子を呼んだ。
「休んでいるところゴメンね…白城さん達の手伝いに行って欲しいんだ…クッキー20枚でどう?」
僕の提案に白獅子は元気よく吠えると姿を消した。
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