62話 TS化した僕の姉は通信を傍受する

 少し落ち込んでいると佑那が慌てる。

「違いますよ!?結羽人兄さんは格好いいですし、友紀姉さんは元々可愛いのに綺麗になったり可愛くて私としてはずっと姉さんでいてくれた方が…」

 僕、やっぱり要らない子なんだ…兄としては。

「落ち着け」

 兄さんに止められて佑那は我に返ったような顔をし、アワアワし出した。

「友紀。とりあえずやってくれ」

 兄さんに言われ、告解室を出す。

「何でもありだな」

 呆れたように呟く兄さんに僕は苦笑で応え、司祭室ではなく告解室へと入る。

 中は一定の明かりが保たれていて相変わらず不思議な感じがする。

 少し椅子を退かしてひざまずき台に膝をつく。

 と、

『神のいつくしみに信頼して、あなたの───失礼。神へ申し上げる事はありますか?』

 司祭室の方からでは無く、僕の意識へ直接語りかけてきた。

[はい。実は他国の複数箇所で悪魔召喚の話が出ているのですが、その事について補足をお伝えしようかと…]

『ほう?』

 あ、声のトーンが一段下がった。

[先程兄が現地の方から得た情報によりますと、神や天使を降ろすような大それた事をするくらいならオカルト文献や歴史等に見られて制御が出来てお手軽そうな悪魔召喚を行い、その悪魔を使ってダンジョン内の魔物を倒そうという試みらしいのですが…]

『…状況は聞いております。しかし、悪魔を呼ぶという行いは悪魔に助けを求める行為に他ならず、口先だけの信仰であると自ら証明してしまっているというのに』

[まあ、そうですよね…信仰。信じ仰ぐ、なのですが物質文明歴が長いので存在証明がないと信じられないという人も一定数いますし、神は秘する故に神秘だと思うのですが…]

 うちにいる女神様方はいるだけで神威が溢れて凄い事になってますけど。

『敬虔な信徒が少なくなっている事に心を痛めてはいましたが…』

[あの、お伺いしたいのですが]

『何か?』

[神託を受ける事が出来て、破邪・退魔の力の強い方はどのくらいおられますか?]

『…今回の件に対応できるものというならば、片手で足りるくらいでしょうか。ただ、高齢の者や非戦闘者もいるためかなり厳しいのです』

[その方達に神託を与えて、チームを組織させた上で悪魔退治をさせるという事しか出来ないというわけですか…]

『ん?』

[はい?]

『…いえ、ええっと…貴方の兄であれば幾つかの国に知人がいますよね?』

[……すみません。うちの兄は友人は片手で足りる程度、知人と言っても両手程度の可能性が…]

『………それは…』

 先方から「え?そんなに拗らせたぼっちなの?」って雰囲気が伝わってきて辛い!

[ああ、でも一応僕の方から急ぎ兄や各所へ連絡をする事は出来ますので!]

『そうですか。でしたら今から言う場所に住んでいる者達と連絡を取るよう伝えて欲しいのです名前は───』

[………はい。確かに全て書き留めました。ツテを頼って連絡致しますので神託の方、よろしくお願いします]

『ええ。ええ。よろしくお願いします。これで私達の信仰mゴフッ!?』

 えっ!?

『ゆーちゃん聞こえてる?』

[えっ?ゆる姉様!?]

『その件は任せたよ。私はちょっとコイツを締めるから』

 えっ!?

 それっきり何も聞こえなくなったので、告解室を出る。

「どうだった?」

「浮かない顔ですが…」

[いや、話は出来たし、多少納得してくれたし、神託を降ろしてくれるってのと、悪魔憑きを何とか出来る人達に神託を降ろすからこの住所の人達への支援をって…]

 そう言って僕は兄さんにメモを渡す。

「───この二箇所は奴で何とかなるか…あとは知らないが、まあ何とかしよう」

[あ、少し待ってください。写真を撮って……うん。巽さんをパシってばかりだけど、重要案件だし]

「誰かに送ったのか?」

[中務省関係者に。下記の住所に住まっている方へ神託が下るそうなので急ぎ指示を仰いでくださいと]

「…まあ、各方面から情報があった方が動きやすいだろうからな…それ以上は知らんってスタンスで行くか」

[はい。これ以上の手は打てませんから]

 僕は告解室を消してカジュアルモードへと切り替えた。

 ───佑那の悲鳴は聞かなかった事に…「これはこれでオッケー」ってなに?


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