632話 お部屋訪問と、配信乱入
「あっ、こちらをどうぞ」
「あら!あらあら!友ちゃんありがとう!」
美沙さんにお菓子の詰め合わせを渡すと満面の笑みでそれを受け取る。
「お茶を用意するからあの子のお部屋にどうぞ。あっ、お部屋の場所は覚えているかしら?」
「大丈夫です、覚えていますから」
そう言って僕は2階へと歩を進めた。
ノックをする。
「紅葉さん、僕です。友紀です」
中からの返事はない。あれ?もしかして配信中かも?
僕は扉を含め周辺を見るけど、何かそれを示すものは見当たらなかった。
もう一度ノックをしてみたけど反応は無い。
「うーん…出直した方が良いのかなぁ」
と、
「………本当に、友紀ちゃん?」
部屋の中からか細い声が聞こえた。
「ちゃんではないけど友紀だよ」
「本当に?狐狸妖怪の類ではない?幽霊じゃない?邪神じゃない?」
「狐や妖怪、邪神は知り合いにいるけど僕は僕だよ」
「じゃあ、じゃあ!本当に友紀ちゃんならこの質問に答えられるはずだよ!」
「えっ?いきなり問題?」
「友紀ちゃんは両性類です。じゃあ結羽人お兄さんは?」
「待って!?僕両性類じゃないよ!?」
「さあ答えは?」
「答えの前に僕両性類じゃないってば!…自称人類」
「友紀ちゃんだ!」
扉が開き、中から満面の笑みを浮かべた姫カットの美女が姿を見せた。
「いやマジでその答えではなくて両性類の所で反応していたでしょ」
「友紀ちゃん!2年1ヶ月と21日振りだよ!」
「あ、顔見たかっただけだから…じゃあね」
ガシッ!
「逃がさないよ!?」
「離して!?あとナチュラルに掴んだ腕を胸に抱かないで!?」
ギャアギャア言いながらも僕は彼女の部屋へと連れ込まれた。
「今日は特別ゲストに幼馴染みの友紀ちゃんが来てくれたよ!」
「えっ?何事?」
「あ、ごめん。実は今配信中だったんだ」
「帰りゅ!」
「まぁまぁ…まぁまぁ!」
コメント欄が凄い動いている。
「僕は質問とか答えないからね!?」
「じゃあ私の膝の上に座って?」
「駄目です」
「駄目なの!?私に大しゅきホールドしてくれるまでは終わらないわ」
「あっ、駄目人間レベルが上がっている…香也レベルに」
「───私は正気に戻った」
…うん。一瞬でスンッってなったね。
コメント欄大草原になってる。
「美人で元全国模試順位一桁。そしてお金持ちなのに…なんでこんなに残念な人になったんだろう」
引き籠もりを拗らせた……うん。
くだらない言い合いをしながらも配信を終わってもらい、一息吐く。
「久しぶり。紅葉さん」
「美月って呼んでって何回言っても…お母さんは名前呼びなのに…」
いや、拗ねるのそこなの?
「そろそろ外に出よう?」
「迎えに来てくれたの?…と言うよりも、さっき狐とか妖怪とか邪神って…友紀ちゃんが巫女様になったのは分かるけど」
「実家に兄さんが九尾の狐を拾ってきたんだ」
「え゛っ!?」
「だから狐と妖怪はクリア。あとは邪神だけど…うん。うちに邪幼女神様がいらっしゃるからねぇ」
「相変わらず無茶苦茶だね」
「その反応からして多少は怖がりが改善された?」
「あの職業を得たら嫌でもね…」
紅葉さんなんでそんなに遠い目をするのさ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます