21話 TS化した僕は呼び出される(2度目)

「あのぉ…済みません」

 さっき課長を呼びに行った女性が申し訳なさそうに僕に声を掛けてきた。

[?何か?]

「藤岡課長がお呼びです。第2会議室まで来て欲しいとの事でした」

[はい。分かりました。ご丁寧にありがとうございます]

「ひゃいっ!?」

 ───軽く礼を言っただけなのに顔を真っ赤にして逃げていった件について。

 酷くね?

 報告書作成途中だったが、保存してログアウトする。

 緊急会議での呼び出しなんて昨日の件以外ないよなぁ…僕やらかした覚えないけどなぁ…

 そんな事を思いながら第2会議室へと向かう。

 ブースを出た瞬間に集まった周囲の視線は気付かなかった事にする。するったらする。



 ドアをノックし、応答があったので失礼しますと一声かけて入室する。

 と、そこには昨日の方々+αがいた。

 あと、全員顔色悪いんですが…

「君が職業変化で女性になったという岩崎か?」

 入室そうそう協会長より奥の席にいた男性が声を掛けてきた。

[はいそうです]

「ふむ。昨日の一件は神々が君の事を気に入って色々便宜を図ってくれていると考えて良いのかな?」

 なんでそう曲解しているのかな!?

[気に入ったというのはそうかも知れませんが、便宜と言うよりもいくら伝えても耳を傾けもしない現状に焦れて行動を起こしたというのが正しいかと思います。

 現在自分の方でも報告書を作成しておりますので、藤岡課長へ午後にでも提出いたします]

 僕の発言にその男性は少し顔をしかめる。

「神託は元々備わっている者がいるから与えていない。これは神々の手落ちだと思うんだが…まあ、いい。君の方で神をこちら側へと引き込む事は可能か?」

 あ、これアカン状態だわ。

 僕の背筋が寒くなる。

 課長の方もうわぁ…といった顔をしているし。

 これはいう事は言っておいた方がいいんだろうなぁ。

[失礼ですが神々は最後の慈悲で協力しているに過ぎず、見捨てている神々もいる現状です。神域で拝謁した三柱の神のうち二柱は異界の神であり、現状動くに動けずにいる神をそれぞれの神界へと助ける為に好意で来ているだけで、場合によっては祝福自体を止めるかも知れませんよ?]

「なにっ!?」

 少し慌てたその男性は藤岡課長の方を見る。

「───事実です。下手をすると現在この会話も聞かれている可能性もあり、それが原因で祝福を取り上げる…とまでは行かなくてもスキルを停止させる可能性もあります」

 あの文箱を見てもまだ認識が甘い…んだろうなぁ…だからこうして僕にこんなロクデモナイ事を言っている。

「今まで何もしてこなかったのに今更干渉してくるのか?」

 えっ?協会長がその認識?文書読んでないの!?

 慌てて課長を見ると課長も「はぁ!?」って顔で協会長を見ている。

「この世界の未曾有の危機だよ?君がどうにかできるのなら説得なり体を使うなり何でもして取りこめ」

 あ、これマジで駄目だ退職届出したい。

 上には弱く下には強く当たる嫌な気質の方々が役満できてる。

 多分協会長より上の人?は藤岡課長の言葉に黙ったのに協会長がやらかしたぞぅ。

 ゆる姉様とミツルギ姉様は怒らなくてもせお姉様は怒る案件だと思う。

 ───日本国内における祓戸の大神より与えられたスキル及び祝福を一時凍結する。これはこの国の者が我が使者に不義理を働き我等を蔑ろにしたためと知れ───

 ほらー!強硬手段に出たー!

 これぜったいあの神域拮抗のエネルギー割り当てしなくて良くなった挙げ句神力の回復結構できたから使ってみたって感じだよね!?

 突如祝福時の時のように脳内に直接聞こえた声に会議室が騒然となった。

「まさか、本当に?」

「私達のせいだというのか!?そんな馬鹿な話あるか!狭量にも程がある!」

「いやまて、ただの脅しだろう。この部屋の人間にしかアナウンスしていない可能性もある」

「待ってください。今、管理課で呪物の隔離作業をしていたはずです。もし今の話が本当なら大変な事に…」

 もう、阿鼻叫喚。

「岩崎!お前が何とかしろ!」

 協会長が騒ぐ。

[いえ、無理です。神は時として祟るモノです。地雷を踏み抜いた方が何とかするのが筋では?]

「雇ってやっているのにその言いよう…良いマンションを宛がった恩も忘れて…」

あ、ちょっとカチンときた。

[───なるほど。あのマンションは自分の個人情報漏洩に対しての賠償ではないと。そして文句があるのなら辞めろという事で宜しいでしょうか?]

「───個人情報漏洩…?」

 おや?なんか上の方が反応した?

「岩崎!」

[あ、退職届は本日中に提出したら宜しいでしょうか?ご安心ください。すぐにマンションから立ち退いた後、きちんと被害届を提出します]

「待て待て待て!君は何の話をしている!?」

 ドンドンドン!

「失礼します!地下の呪物隔離室がアナウンスとともに無効化されて職員四名が呪物によって昏倒、現在聖職者系と祈祷師の方で救出と結界を形成していますが難航しています!」

 なんというカオス。

 聖職者系…まあ聖者関連は別宗派だけど地域特性で効きが少し悪いだろうなぁ…祈祷師は仏教系だろうけど、こちらも若干神の力を経由しているだろうから…

 藤岡課長を見ると、なんか悟った顔をしている。

 あ、僕の方見て頷いた。

「岩崎。管理課の方、頼めるか?私がこの場は説明する」

[承りました]

「それと岩崎。今更だが、昨日の件は巽経由で中務省へ連絡が行っている。もしもの事があっても中務省がバックアップしてくれるだろう」

[あ、大丈夫です。いざとなったら兄を頼る予定ですから]

「あー…それなら更に安心だな。では頼んだ」

[はい。では、失礼します]

 僕は一礼して会議室を後にした。


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