22話 TS化した僕は魔を払い信者が増える

 マジで悔い改めてもらえないようなら退職しよう。

 ちゃんと業務終わったら退職届作ろう。

 昼休みにネットで検索しておこうかな…

 そんな事を考えながら地下の呪物隔離室へと向かった。



 [うわぁ…]

 呪物隔離室の扉を開くとそこには六名倒れていた。

 中央に祭壇があり、その手前にティッシュ箱位の木箱があり蓋が開いていた。

 更にはその箱から赤黒い触手が伸びて六人の足を掴んでいた。

 鑑定結果は『八重箱』とある。

【八重箱】:鬼に殺された八人の赤子の怨念が詰まった箱。生命力を吸い尽くし満たされた時、再び現世に生まれる。と妖魔に誑かされひたすら他者の命を奪う。ただし箱の底は二重底となっており、そこから赤子を殺した鬼達へと生命力が流れていくため延々と生命力を奪い続ける呪い箱である。

 ───うん。控えめに言って最低最悪だね。

 とりあえず室内に入る。

 同時に、触手が全て弾け飛んだ。

 あー…そっかぁ…

 慈母在ル地ハ戦場ニ在ラズが良い仕事してますねぇ…

 ここ、ダンジョン外だから対邪結界が僕の周りにノータイムで展開されてるよ。

 起きてください。早くここを出てください。

 倒れている人達に声を掛けると呻きながらも何とか起き上がって、あ。一人起き上がれずに匍匐前進だ。

「助かった…特務の岩崎か!?」

[ああ、岩村さん。僕の状態知っているんですね]

「ああ。職業の絡みで女性になったと聞いたが…兎も角助かった」

[いえいえ。そちらの五名は大丈夫ですか?]

「無理…足に力が入らなくて立てない」

「ありがとう。でもここを隔離して中務省に連絡する他ないよ…」

「しかし、突然神様があんな事するなんてなぁ…余程の事やらかしたんだろうな」

「そのせいで死にかけたけどね」

「ほら、肩貸すから掴まれ」

「岩崎…さんはどうするんだ?」

[あ、僕は問題無いのでこのまま解呪します]

「できるのか!?」

 問題無くできます。

「しかし、万が一のために俺らはここで待機していざとなったら君を確保して逃げよう」

 そう言って六人のうち二人が扉を開けて逃げ場を確保し、三人がすぐに動けるよう身構えている。

 尚、未だに立てない女性の方は扉を背に座っています。

 現場からは以上です。

 いやぁ、こんな所で責任感じて欲しくはなかった…

[ちょっと離れていてください]

 巫女服へモードチェンジし、機能一式を見る。

 ───せお姉様とは少しお話しをしないといけないかも知れませんね。

 神楽舞を踊れってか。だが断る!

 神楽鈴と五色布ではなく祓戸社を選択!

 祭壇を囲むように簡易的な祓戸社が現れる。

 そして同時に箱から悲鳴が上がり、大きく震えた。

 祓詞を奏上する。

「え!?なんで!?祓戸の大神より関連のスキルも全部…」

 雑念を祓い、ただひたすらにこの悲しき存在の諸々の禍事、罪、穢を祓い浄めてくださいと恐れ多くも申し上げます。

 親しき仲にも礼儀あり。だからこそ低頭する。

 奏上を終え、二拝二拍手一礼をする。

 瞬間、天井から滝のように凄まじい青光が箱目掛けて降り注ぐと、

 パァンッ

 何か木の板が叩きつけられて弾けるような音と共に社も消え、元の光景へと戻った。

「…今の、何?」

 背後で呆然とした声がしたが、それよりも───箱の名前が変わっちゃった…

【八衛箱】:祓戸の大神によって全ての罪穢が祓われた木箱。二重底は存在せず、大神の力の残滓によって中に入れたモノの禍事を祓う。聖遺物級(残56)

 あー…呪物が聖遺物級のナニカになっちゃった…しかもなんだろう残56って。

 ちょっと現実逃避しながらも箱を手に取る。あ、蓋がある。

 安全を確かめ、再び男装モードへとチェンジして振り返ると…

「神の御技だ…」

「御使い様だ…」

「えっ!?彼女があの言葉にあった神の使者!?」

「巽女史の言葉は真実だったのか…」

 膝を着き祈る仕草をする三名と呆然と立っている一名。扉の方にいた二人に至ってはそれ病室でも見た平伏だよ…

[あの、コレどうしましょう…呪物をちょっと(せお姉様が)勢い余って別のモノにしてしまったみたいなんですが…]

「はっ!ではこちらで鑑定を行い、管理いたします!」

 うわぁ…岩村さんまで変わっちゃってるぅ…

 僕は何とも言えない気分で木箱を岩村さんに渡し、医療班スタッフブースへと戻った。

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