23話 TS化した僕はややこしい話を聞く①
自ブースに戻ってきたけど、なんだろうこのお通夜感。
[西脇さん。何かあったんですか?]
「いっちゃん!」
ぅえあ!?
[何事ですか…ってなんでみんなこっち見てるんですか!?]
「いっちゃんここを辞めるの!?」
[あー…そうなるかも知れません。ってまだ会議終わっていないのにどこからその話が漏れているんですか?]
「これよ!」
そう言って西脇さんが見せてくれた物はスマホのグループチャットだった。
って、ぇえー?
【緊急】速報:老害長のせいで岩崎さん辞める!?【速報】
長谷川 :オアシスが、無くなっちゃう!
山田 姉:ナニイッテルノカワカラナイ
山田 妹:部長自ら会議中にスレ建てとな!?
西脇 :詳しく
コック長:詳しく
藤堂 :ちょっとパパ経由で所管庁に圧掛けてくる
長谷川 :経産省の室長が側に居るけど、現在老害長を糾弾中。
尾崎 :急いで老害長の闇資料を用意します。
新屋敷 :もしかして、その経産省の室長も準共犯では?
山田 姉:まとめて処す。
西崎 :詳細はよ!
長谷川 :幾つか前情報が必要な挙げ句ここも混乱中なの!
西脇 :ではボカして3行で
長谷川 :1.よく分かっていない室長が岩崎さんに調略打診
2.横から老害長が相手にハニトラ仕掛けろと言う
3.岩崎きゅん「あ、退職届出さなきゃ」
西脇 :ギルティ
山田 姉:ギルティ
コック長;ギルティ
山田 妹:滅殺
新屋敷 :ギルティちょっと情報取ってくる
西崎 :カウンターで後処理している間になんて事を!
藤堂 :大分拙い事になって参りました。詳細はお昼に
いや、こんなもの見せられても…あの人経産省のお偉いさんだったんだ。
「これ本当なの!?」
[えっと、まあ…そうですね。だいぶ、かなり端折っていますけど]
「まあ、それは課長が来てから確認するけど、どうなの?」
[西脇さんグイグイ来るなぁ…一応退職届は書いておこうかなぁとは思っています]
「次のアテはあるの?」
[何しろ急ですから…ないわけではないんですが、昨日引っ越ししたのにまた引っ越すのかぁとちょっと面倒になっています]
「引っ越しもするの!?」
[はい。引っ越し先の件でも言われましたので退去する事になりそうです]
「───ちょっと行ってくるわ。みんなも来る?」
西脇さんはジッと僕らの会話を聞いていたブースメンバーに声を掛けると、全員が頷き席を立った。
[えっ?ここは…?]
「今部署のほとんどが開店休業状態よ?私や医療関係職は使えるけど」
[了解。僕は急ぎの報告書作成があるのでそれやっておきます]
「ええ。お願いするわ」
西脇のオネェさんを先頭に僕以外の医療班が居なくなってしまった。
報告書を書き上げたタイミングで課長が戻ってきた。
精神的疲労が凄そうだ。
「岩崎…もう何が何だか分からんよ…」
あ、ちょっと泣き言入った。
「少し詳しい話をしなければならないんだが、カウンセリングルームはどうだ?」
[はい。大丈夫です。あと、これ昨日の報告書です]
「確かに受け取った。他の連中はどうした?」
[開店休業中だからとみんなでちょっと話し合いに行きました]
「───まあ、仕方ないか。行くぞ」
[了解です]
ブースを出てすぐ横のカウンセリングルームに入る。
念のために利用中と出して、外部に聞こえないようにBGMを流す。
「先程の件だが、済まない。諸悪の根源は協会長だが、全員で止めきれなかった私達にも責任はあると思っている」
課長はそう言って深々と頭を下げた。
[いや、アレは無理でしょう……どう考えたって]
「まあ、あの場で一応会長の権限凍結が決定した。即更迭できなかったのは仕方がないが…明日には更迭できるだろうな。ついでに総務部長と事業部の部長補佐も何らかの処分が下される」
まさかの延焼ですか!?
「会長の腹心一掃だよ。それに個人情報の漏洩の件も含めいくつかやらかしがあるらしい」
だいたいロクデモナイじゃないですかヤダー
「まずは説明からだが、ここ、ダンジョン探索者協会は経済産業省所管で官民連携だが、色々問題があってな…その問題が今一気に出てきた感じだな」
ため息を吐きつつ課長は話を進める。
「ダンジョンを新たなエネルギー資源の採掘場として民間に開放するという目的で立ち上げられたのがここだが、それ以外に防衛省が創設した対ダンジョン殲滅部隊がある。これは資源になると分かる前に立ち上げられ、現在は中務省との共同部局として存在している」
[成る程。ここはダンジョン崩壊に関して対応できない可能性が高いと]
「私達特務課メンバーがフルで動けば対応できるだろうが…」
うちの課最終兵器感半端ない…
「そもそも探索者の管理補助機関として立ち上げたとは言っているが、利権絡みの天下り組織にまで落ちかけていたのを数年前に先代会長が清浄化を図り何とか今の状態になっていた。ところがだ…今の会長になってから討伐時に手に入るアイテム等にも目を付けてこちらで管理しようとし始めたんだ。そしてそれを流すために事業部を設立し、管理課の中にむりやりアイテム情報管理と言いながら呪物を取り扱う部署を作った」
えっ?
[もしかして、憑依したり殺しに掛かるような危険物の処理って…]
「本来速やかに中務省か対ダンジョン殲滅部隊に一報を入れて回収をお願いする」
[じゃあ少し前にあった件とか含め、最近特に増えていたのって…あれ?]
「基本買取か、無料処分だが、呪具・呪物の中でも持っているだけで影響を及ぼすような危険なモノは処分費用を取っている。らしい」
[産業廃棄物みたいなモノ…もしくは危険物処理費用と考えれば良いかも知れないけど…ん?らしい?]
「言っただろ?中務省か対ダンジョン殲滅部隊に一報を入れると。それをせずに事業部の裏業務で一般から強力な呪物を有償で引き取り、こちらの内部で処理させていたらしい」
[……僕ら、関わってるというか、巻き込まれましたよね。何度も]
「ああ、ガッツリ何度もな。しかもこの事は先程の会議で連中の言い争いの中で出てきた爆弾だ」
あ、他にもありそうで怖い…
「室谷室長も、処罰されるレベルのやらかしも出てきたからなぁ…ああ、あの室長は昨日の件は会長から都合の良い事しか聞いていないからな?なにせ今朝の会議からしか参加していない」
[だからあんなおかしな事を言っていたのか!]
「ちなみに会長は読んでいる。にもかかわらず理解していない」
───うん。あの人は駄目だろ。色々と。
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