507話 先手、即興ライブ! 後手、厄介ファン

 ガタガタガタッッ!

 眠っていた神々が一斉に起きだし、こちらを見た。

 うん。普通に怖い。

 あと、僕に様付けるのは何故?

 パァァァンッッ

 突然ナニカを叩く音が辺りに響き渡る。

「ちょっと、頭冷やそうか」

 音の震源は柏手を打った兄さんだった。


「僕要らなかったんじゃない?」

 ちょっとジト目で兄さんを見る。

「いや、一時的にこちらに気を向けただけだからな?」

 無表情でそう言う兄さんにちょっとため息を吐く。

「で、僕どうすれば良いの?」

「アカペラで歌える歌を歌ってくれ」

「う゛ぇっ!?」

 どうしよう…「HYMN TO JOY」は歌詞が版権引っかかるかなぁ…「来たり給え、創造主なる聖霊よ」とかかな…でもあれ1人で歌うモノじゃなかったような…

「どうした?」

「版権フリーの曲って、何があったかなぁって…」

「童謡とかはどうだ?」

「シューベルトの子守歌は…日本歌詞が著作権で掛かっちゃう」

「英語歌詞は問題無いだろ」

「そだね…じゃあ、それで」

「いや、歌えるのか?」

「うん」

「マジか…」

 えっ?なんで引かれてるの?


 ───うん。みんなスヤスヤ眠っちゃったよ?

「こっち見んな」

 酷いっ!?

 僕と兄さん…と、兄さんがユルフテラ様を背負って医務室を出る。

「改めて、お前の言霊と祈りの力は規格外だという事が分かった」

「どういう事?」

「回復バフの副作用がこれ」

「OK把握」

「見付けましたっ!」

 え?何事?

 驚いていると銀髪縦ロールなおぜう様がこちらにやってきた。

「ああっ!そのお姿も大変可愛らしい!ますます私のモノにしたくなりましたわ!さあ!私の手を取りなさい!この偉大なるア・ドゥエリ・テウス・メム・ケセティウーサの僕にして差し上げますわ!」

「ていっ」

 ああっ!ユルフテラ様を投げたっ!?

 ユルフテラ様が宙を舞い、足が銀髪縦ロールのおぜう様に直撃。

 おぜう様は倒れ、ユルフテラ様は何事もなかったかのように普通に立っていた。

「酷くない?」

「起きたらすぐに降りろ」

「しかし…凄いね!一瞬寝ちゃったよ!本気で!」

「誤魔化し下手か」

 ユルフテラ様は兄さんの方は見ないようにしながら僕を褒める。

「あの、あの神様は…」

「「無視で」」

 兄さんとユルフテラ様がハモった!?

「文句言ってきたら殴る」

「アレの親が文句言ってきたら殴るから」

 うっわ…そんな感じの神様なんですね…

「ちょっと!何なんです───」

 吹き飛ばされていたおぜう様がクレームを入れようと兄さん達を見て、ビタリと動きを止めた。

 ピタリと、ではなくビタリと。である。

 そして顔色が悪くなり、汗がダラダラと…

 ああ、これが汗顔の至りってヤツかな?といいたくなるくらい汗がダラダラと出ているんですが…

「どうしてあなた方がここに!?」

「ここ、職場なんだけど?」

「此奴、俺の弟なんだが?」

「嘘ですわ!絶滅のおと…え?弟?弟!?」

 あ、この神様、とんでもなく失礼な神様だ。

「無礼だね。この子、中位世界の創造神なんだけど?君とはレベルが違うんだよ?」

「っ!?」

 ムッチャ凝視されているんですが?

「また来ますわ~~~~~~~!」

 脱兎の如く逃げていったよ…ホント、何あれ。

「……本当に、出禁にしようかな」

「俺としてはまだ出禁にしていなかったのかと」

「アレの父親絡みでそうそう出禁にはね…」

「…僕、帰っていい?」

 なんか疲れちゃったよ。

「ああ。俺もすぐに帰るから先に帰っていてくれ」

 兄さんが苦笑しながら頭を撫でてくれた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る