506話 先手、本部の反応 後手、緊急呼び出し
SIDE:結羽人
「巫女にゃんこは!あの子は助かるんだよね!?」
涙目で俺にしがみついてくるユルフテラ。
いや、近いどころか密着しているんだが?
「さぁ?」
俺が首をかしげるとユルフテラは更に泣きそうな顔をする。
「そんなっ…あんなに…お母さんの教えを受け継いで頑張っている子が…可哀相な目にあうなんて…ないよね!?」
「世界にはそれ以上に報われない者達が多数いるだろうが。フィクションに感情移入する前にそういったことが少しでも減るよう努力しろ。もしかして、友紀が可哀相な目に遭っていると誤認してないか?」
「ぐっ…そう、だね。今はダンジョンの対応含め全力でやらなければならないね」
滲んでいた涙を拭ったユルフテラはそう言って微笑む。
「もしかしてだが、本部の機能…何割落ちている?」
「最大4割かな。管理課は空間遅延と時間遅延を併せて掛けていたからノーダメージだけど…うん」
つまりは管理課以外に結構なダメージが出ていると。
「……うちの弟恐ろしすぎでは?」
対神視覚兵器となってないか?アレ。
「一番凄いのは感情の無い子達が可愛さや愛を知った直後に成長した巫女にゃんこの神威と状況を知って絶望と錯乱してね…今医務室で休んでいるよ。二ケタほど」
虚ろな表情のユルフテラに俺は責任の一端を感じ、メッセージを送る。
【───スマン友紀。緊急事態だ。急ぎ本部へ跳んできてくれ】
僕は兄さんの緊急事態との言葉に慌ててスタジオを飛び出して跳んできたんだけど…到着して気付いた。
「…急ぎのあまり、モードチェンジすらしてない…」
でも服が駄目になっていない。助かったけど、不思議だ。
「……普通の服なのに、良く保ったな…いや、そのカチューシャのおかげか」
「えっ?」
「隠し機能にノータッチ機能が付いているらしいぞ」
「無駄に高性能だった!?時空間制御の専門はレベルが違った!」
あと、ユルフテラ様?顔を押さえてプルプル震えてるのは何故ですか?
「はぁっ、はぁっ!?かわっ、かっ、可愛い!」
「───よし。巫女にゃんこショックはそれで何とかなるな」
兄さんが満足げに頷く。
いや訳分かんないよ!?
「簡単に言えば、巫女にゃんこショックで本部の機能の4割がダウンしたらしい」
「は?」
「しかも感情を知らない一部の神々が感情を知ったと同時に巫女にゃんこが救われないかも知れないと絶望して錯乱したらしい」
いや、それは…
「……感情移入しすぎじゃない?」
「だよなぁ」
「それをしでかした張本人がそれ言う!?見ているだけでその感情がビシビシ伝わってきたんだよ!?」
「いや、神様が精神防壁弱くてどうするんですか?」
「弱くないからね!?」
「要は温度差に風邪ひいた状態だな」
「そんな軽くないから!ああもう来て!」
ユルフテラ様に連れられて医務室へと向かった。
医務室は空間拡張されているようでかなり広いけど…うん。5~60名はいるんですけど…本当に精神防壁弱くないの?
かなり不安に思いながらも中央へと進む。
中央では一柱の女神様が数十のスクリーンを操作していた。
「あら、ユルフテラ…っ!?」
女神様はユルフテラ様を見たあと僕を見て固まった。
かと思いきや、
「みんな!巫女様がいらしたわ!」
室内全域に伝わるよう、精神干渉技術を使った声で患者の神様方をたたき起こした。
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