686話 Believer


「ただ今戻りました」

「おかえ…どうしたの!?大丈夫ですか!?」

 板額さんがボロボロの状況で戻って来慌てて『慈神の献身』をかける。

「審議の石板を壊そうとする影人間と信者達の戦の真っ最中でな…まとめて吹き飛ばすわけにもいかず乱戦の中突っ込んだ結果だ」

「…合戦場になっていたのか」

「死者が出ていないのが不思議なほどだったぞ…下手をすると他の石板周辺も同様かも知れん。まあ、倒せずとも防衛で救援を待っていたと言う所だろうが…」


 SIDE:日本


「助かった…っづう!」

 男は胸を押さえその場に崩れ落ちる。

「大丈夫ですか!?」

 医療班がその男の元へ駆け寄ると、男は力なく笑う。

「…ええ。あちらこちら折れているようですけど、命に別状はありません」

「まさか、身代わりスキルですか!?」

「…はい。力も無く臆病者ですので、せめて助けにと…」

 医療班が慌てて救急隊員にストレッチャーを持ってこさせ、男を乗せる。

「…全治半年でしょうか。スキルを駆使してもそれだけという事ですが…」

「仕方ありません。死ななかっただけでも、御の字です」

「……んっ?君は、防衛隊では無いのか!?」

 身分証を見て声を上げる救急隊員にその場に居た全員が慌てて男を見る。

「はい。ただ巫女様が、無理をしているのに…我々が無理をしないなんて、ナンセンスですから」

「我々?っ!」

 救急隊員が慌てて石板の背後を確認する。

 そこには妙齢の女性と少年が男と同じようにグッタリとしていた。

「その二人は、回復薬を飲んでいますが、確認お願いします」

 そこまで言うと男は気を失った。



 SIDE:佑那


「ほら、ケーキにプリンもあるよ」

「あっ!カフェゼリーとバニラって…凄いです!」

 私は駅の近くにある喫茶店でジャンヌさんと朝食(2度目)を楽しんでいる。

「凄いですね…世界が、いえ、国内も慌ただしいのにお店を開けるなんて」

「この辺りはうちの元にゃんこが巡回しているし、玉藻さんの巡回地域にも掛かっているから安全という事もあるだろうし」

 スペシャルサンドセットを注文し、ジャンヌさんを見る。

「私は、プリンとカフェゼリーとバニラ、ミルクレープもお願いします!」

 おぉう…

 まあ、注文しておく。

 数分で出された物を見てうわぁとなる。

 私はちょっと引いた感じで。

 ジャンヌさんは歓声で。

 いや、まあ…ね?兄さんのデザートの場合だと何故かそれくらい食べられるけど、普通のお店のスイーツは…

 そもそも私が注文したのはスペシャルサンドであってデザート系じゃ無いけど。

「やっぱり、良い世の中です」

 先にプリンを食べると決めたのかスプーンで一掬いし、呟いた。

「まあ、そうだろうねぇ」

「はい。ですから私はできるだけこの世界を助けたい」

「兄さんも同じだと思うよ?知人が、周りの親しい人達のために見捨てずに頑張っている」

 一口食べる。

 うん、美味しい。

「貴女は、どうですか?」

「私かぁ…」

 私は、どうなんだろう。

「私も知り合いがそこそこいるからねぇ…守れる範囲であれば無理せずに…って感じかなぁ」

 例え友人であっても邪魔をするのなら容赦するつもりはないし、無理してまで救うようなことはしない。

「流石ですね。冷静です」

「兄さん相手だと冷静でいられないけどね」

 そう言うとジャンヌさんがクスリと小さく笑い、プリンを食べ始めた。


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