687話 ジャンヌさんは僕に似ている?
「ただ今戻りました!」
「ジャンヌさんおかえりー」
「こちらがお土産です!」
ジャンヌさんからワンホール入っていそうなケーキ箱を差し出してきた。
「ありがとう。一緒にお茶しない?」
「はい!是非!」
うん。満面の笑顔と良いお返事ですね。
佑那は紅葉さんを鍛えているらしい。
紅茶を用意し、アップルパイを切り分けて席に着く。
うん。ちょっとチープな味と言うよりも水気が多い気がする…これは下処理失敗したのかな?まあ、シナモンの香りもして美味しいけど。
「あの」
「?」
「佑那さんと歩いていて、日本という国がとても平和だと改めて思いました」
「うん。そうだねぇ」
「勿論一側面の僅かな所しか見ていないことは分かっています。ただ、皆さん今を精一杯生きていると…この平穏を守りたいと思いました」
「…うん。ジャンヌさんは聖女さんだねぇ」
「っ、ただの生意気な小娘です…」
「ジャンヌさんは国のため、人のため、神の示すまま進み続け…今も人のために僕を説得しようとしている」
「………」
「僕はまだ、人に絶望もしていないよ?元々日本という国の人は2割の悪人と1割の善人。そして7割の中間層が居ると思っているんだ」
「…悪い人の方が、多いのですか?」
「うん。ただ、7割の中間層も半数以上が程度はどうであれ悪い方に向いているとは思うけどね」
「そんな…」
「さて、ここで質問です。今僕は何を基準に善悪判断しているでしょう」
「えっ?」
ジャンヌさんが固まる。
僕は紅茶を一口飲む。
カップをゆっくりと置き、ジャンヌさんを見る。
「現代の法とモラル…でしょうか」
「モラル…便利な言葉ですよね。倫理、道徳とも言うかも知れませんけど」
「そうですね」
「現行法だと色々な穴があり、倫理でそれを補う…確かにそれが全てです」
「では」
「ですが、僕はそれだけでは判断していません」
「えっ?」
「その人の善行等も加味しないと悪人が2割どころか4割位になってしまいますし」
「4割…」
絶句するジャンヌさん。
いや、本気で最近モラル壊れているよ?
まあ、軽度なら問題視しないけど、マイルール適応で騒ぐ人達の重度問題とかね…
具体的に一例を出すとすれば…僕を叩いている人達とか。
本当か嘘か分からないのにとりあえず叩いたり、相手を貶める。
少なくとも踊らされて叩いている人だけでも数百万人単位だろうしなぁ…それでも全体からすれば数パーセントか。
「好き嫌いを別として加味して考えるか、機械的にカルマ値判定をするか…後者が良いかもしれませんが」
あっ、顔色悪くなってるぅ…
「まあ、身近な人や善良な人が居てくれる限り僕は協会に出勤し続けますし、身の回りの守りや必要最低限の手助けはするつもりですよ」
「そうですか」
もの凄くホッとした顔してるぅ…
僕個人としては勿論周りの人の手助けはするけど、無理をするつもりはない。
「ジャンヌさん。無理してまでは助けようとしないでください。動くなら佑那と話し合ってくださいね?」
「それは勿論です」
即座に頷くジャンヌさん。
「状況によって変わると思うけど、ジャンヌさん。自由にしてください」
「えっ?」
「お散歩行った先で助けを求める人が居たから助けた…そんな事まで制限するつもりはないですよ?だから佑那と相談してください。
あと、出来れば最低2人1組でお願いしますね」
「はいっ!」
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