92話 決着~バトルでさえないバトルシーンな件
殺意の高い頭部や胸部目掛けての発砲に対して肉厚な剣がそれらを阻み弾く。
そして一人、その勢いのまま柄頭で胸を強打され吹き飛び、そのまま消えた。
しかし佑那は一切足を止めず、すぐにその少し離れた所にいた襲撃者へと剣の切っ先を下に構え直し襲いかかる。
機動力を削ごうと下半身目掛け発砲したのはほぼ同時。
それすら読み切られていた動揺は僅かであったが、その僅かな時間すらこの戦闘には致命傷だった。
パァンという音と共に佑那は襲撃者の右側頭部を掌で撃ち抜き、衝撃によって襲撃者は意識を失い、膝から崩れ落ち、消えてしまった。
………ただ、呆然と映像を見ていた。
[リアル無双ゲー?]
「いえ、あの距離からの十字砲火をされた場合は…余程タイミングの見計らいと覚悟がなければ」
巽さんが険しい表情で僕の台詞に答える。
「相手の持っている銃自体が大口径の.50AE対応デザートイーグルのようだ。そこそこの装備をした防御特化の中級乙種探索者以上でなければやられるだろうな。もっとも、足など当たれば衝撃で吹き飛ぶが」
殺意高め…でも防御力がそれを上回っていると。
「突っ込んだ際、二発は剣が弾いていたな。しかもスキルによる突撃だから生半可な力では止めることは出来ない」
…そんな超強力な銃の弾丸反射されて、この人達よく無事でしたね…
「いや、こいつら痛覚耐性で誤魔化している可能性が高い。それでも残り三人…どう対処するのかだな」
兄さんは口元を僅かに緩めた。
佑那は剣から細剣へと持ち替え、一人孤立した襲撃者へと駆ける。
突撃された側は手数での対応に切り替えたのか銃を変え、連射してきた。
離れた所にいた二人組も射線を取るための位置取りを行おうとするが、そこは巧みなフットワークと高速移動で弾丸を躱しつつ距離をできる限り離さぬよう動き回り…目的の襲撃者を捉えた。
一足で間合いを詰め、細剣が銃を弾き、ベルトとホルスター等を破壊すると相手の後ろへと反転し、後ろから首根っこを掴むと───残り二人目掛けてそのまま超高速の水平移動を行った。
あまりの常識外れな行動に二人は反撃を忘れ慌てて左右に跳び退いた。その瞬間、
ダァンッ、ダァンッ
二発の銃声がし、二人は自身が撃たれたことに気付いた。
一人は撃たれた瞬間に消え、もう一人も数秒後にはその場から消えた。
残るは首を掴んでいる佑那と、首を掴まれている襲撃者のみ。
と、
佑那は慌てて掴んでいた手を離し、その襲撃者を蹴り飛ばした。
襲撃者は蹴られたダメージを受けた様子もなく着地し、佑那の方を向いた。
「───これ、殺さないと駄目なパターン?」
ここへ来て初めての佑那の発言にアナウンスが答える。
『対抗手段は無数にありますのでそれはナシです』
「そう。了解した」
バトルドレスを部分解除し、両腕両足の部分のみにし、構える。
相手側はナイフを取り出すと間合いを詰めつつ急所を常に狙えるように動く。
ギィンッ、チッ、ィン
金属がぶつかり合い、掠る音が幾重にも響く。
相手は何度もフェイントを交えながら攻め込むが間合いに入り込むことが出来ず、いなされる。
しかし佑那も相手が動き回り腕を少しでも伸ばそうとすれば掴むか首を狙ってくるためイライラし始めていた。
やがて、
「姉さんとの時間が…減るじゃないの!」
相手が幾度目かの切り払いの瞬間に手首を返しナイフを跳ね上げ、半身入れ込むと共に頂心肘を放った。
グシャリと嫌な音と共に相手はその場で消え、佑那のみとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます