93話 掃討~残り敵には見せ場は…ない?

 残心。

 漂う硝煙の匂いにも嫌な顔一つせず深呼吸をし、終了を宣言する。

「敵数ゼロ。これで───」

『まだ残っておりますが』

「!?」

 そこでようやく違和感に気付いた。

 アナウンスは7名と言った。

 挑戦者は7名。組織の暗殺者部隊6名と悪霊をその身に宿し戦う部隊長。

 ───最後に倒した相手が部隊長のはずだが、悪霊をその身に宿してはいなかった。

 では、悪霊は何処に?

 気を整え、辺りを見るも見つける事が出来ない。

 元々そういった類を見ることには長けていない。人が気配を隠しても分かるが、そういった類が気配を霧散させるとまったく感知できない。

「……」

 兎も角、気を周辺に張り巡らせて───

『悪霊浄化により戦闘終了。お疲れ様でした』

「…えっ?」



「───50点。軽い補習授業が必要のようだな」

 兄さんの硬い声に僕は乾いた笑いしか出なかった。

 いや、いくら鉄壁の防御があっても襲撃者を倒す?しまいには銃で撃ったりナイフVS素手とか。

「…もう少し磨けば特殊部隊と互角に戦えますね」

 特殊部隊と!?部隊自体と!?

「騎士系スキルを使いこなすことが出来ればかなりスマートに殲滅できます」

 殲滅…

「そもそも祝福を受けて数日しか経っていないと言うことを忘れていないか?」

 あっ…そういえば…

「はっ?待ってください。それは…」

[うん。悪魔召喚騒ぎがあったでしょ?あの日女神様から祝福による職業選択を受けたんだ]

「………異常すぎません?」

[考え方変えたぁぁぁっ!?]

「変えますよ!…ああ、そうでしたね。まだ二十歳ではなかったのですね…しかしそうだとあそこまで戦闘に慣れていたり銃を平然と…」

 頭を抱える巽さんをヨシヨシと頭を撫でながら兄さんを見る。

[そこの所どうなんですか?]

「前に話したシージャックの件等では銃を使わずに制圧したらしいが、一昨日聞き出した話では数年前、後輩を救い出すために銃撃戦したらしいぞ?」

[いやいやいやいや!撃ち方知らない人がすぐに出来ないでしょ!?]

「突入した特殊部隊から教わったらしい」

[未成年に何やっているんですかぁぁぁぁっ!?]

「まあ、うちらの妹は規格外という事だ」

[佑那は兄さんにだけは言われたくないと思う…あ、一つ確認]

「何だ?」

[あの襲撃した人達は?]

「死んではいないぞ?死なない程度に最低ランクに落したポーションで回復させて送り返している」

[それってまた来るのでは…]

「襲撃しているだろうなぁ…今頃」

[えっ?何に!?]

「うちの人形達に」

[…あの人形って複数いるの!?]

「ああ。増えているんだよなぁ…中身も中身でトンデモナイが」

『師匠。あの木製人形の中は神々に仕えていた精霊たちです』

 タイムがコソッソリと教えてくれた。

 と言うことは兄さんが色々元凶だと思います!

「ただいま!」

「おかえり。さて、反省会だ」

 兄さんがニヤリと笑い、佑那の顔色が真っ青になった。

[───いやぁ、あれだけ圧倒していたら問題無いと思うんだけどなぁ…]

「いえ、姫様を守るためにはまだまだ足りませんね…」

 僕の呟きは僕至上主義者な巽さんに突っ込まれ、

「ですよねぇ…」

 よりにもよって佑那に肯定されてしまった。

 僕のスキル、パッシブ過ぎてそういった問題はほぼほぼ問題無いと思うんですけど?


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