865話 聞いてアディエーナ様ちょっと分からないんだけど…


「異界エスカレーター方式かエレベーター方式か…エスカレーター方式でガッチガチに固めた方が安全な気がしてきた」

「…名称が変わっているのに何となく分かるというのが…」

 アディエーナ様がため息を吐いているけど、結構重要なポイントなのでもうちょっと考えさせて!


 SIDE:藤岡


「私は西ルート直行で巽は東ルートの乗り継ぎだ」

 ターミナルで最終ミーティングを行う。

 チケットだなんだという物は一切無い。

 今回は各国が合同で行うミッションであり飛行機もできる限り最速で飛ぶ形となっている。

 はじめは戦闘機という案もあったらしいが、燃料タンクの重量問題含め普通でも問題無いとの結論が出たらしい。

「課長の方が危険かと思いますが…」

 巽が少し心配そうな表情でこちらを見る。

 確かにフライトの航路含め結構な問題がある。

 全世界同時ダンジョン返し…通称大氾濫以降、ヨーロッパ方面で時折翼竜の類が飛ぶとの事で既に十数機が墜落する騒ぎとなっている。

 戦闘機の攻撃がそこまで有効では無いという絶望的状況によって現在は基本日本は西側ルートしかない状態だ。

「サバイバル能力に関してはお前さんよりあるからな。撃墜されても岩崎から貰ったあのリストバンドがあるから最悪なんとかなるしな」

「そう言えば…ありましたね」

 かなり微妙な顔をする巽。誘拐の件で何かあったか?

「アレがあるなら直接的ダメージは問題無いだろう。もし海上落下をしても…」

「「その場合はマンションに転送するッスします」」

 影からそう頼もしい返事がした。

「───らしいからな」

「現地での行動以外での心配は全くありませんね」

「ああ。だからこそ速やかに、だな」

「…はい。ただ、私の方が圧倒的に遅いと思うのですが」

「そうだな。私が飛行機を降りる頃に中継の空港に到着と行った頃だから倍くらいだ。その間周辺の露払いをしておくさ」

 私が直行便でおよそ10時間。そこから10時間の陸路だが、巽は9時間で中継地点。そこからまた9時間かけて私が到着する予定の国際空港へ到着する。

 半日とは言わないが8時間。場合によっては9時間のロスがある。

「それに私が転移ポイントを作っておくのでマスターの特製弁当を用意できます」

 私の影からそんな爆弾発言が飛び出した。

「「………」」

 互いに顔を見合わせる。

「課長替わってください「それは無理だなぁ」」

 岩崎の特製弁当を譲るなんてとんでもない!渡さん!絶対に渡さんぞ!?

「あー、中継空港で自分が一度ご主人に連絡を入れてその際にお弁当を貰う事が可能ッスよ?」

 巽の影から少し申し訳なさそうな声がした。

「貴女が神か!」

「悪魔って言うか邪神寄りッスけど…自分」

 そうだな。岩崎の使い魔は両方とも悪魔系だったな…

「兎も角、これより作戦開始だ。無事現地で会える事を期待する」

「課長もお気をつけて」

 互いに握手をし、それぞれの搭乗口へと向かう。

 一世一代の世界を守る大仕事だ。

 身命を賭して…しまったらコンサートへ行けなくなるかも知れないので全力で任務に当たるとしよう。

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