413話 おにいさまとほんぶ

 本部の中に入ると、洋館的な外見を踏襲しつつ、未来感も溢れている不思議な空間だった。

 ただ言えるのは、外と中の広さが違う!

「ほら、行くぞ」

 兄さんに促されて歩を進める。

「ああああああああっ!」

「!?」

 奥から女性が大声を上げたかと思うと、僕たちの前に転移し───

「ふっ」

 兄さんが僕を掴んで横へターン。そして斜め前に一足飛びをした後、何事もなかったようにカウンターへと向かう。

「結羽人様結羽様結羽人様結羽様ぁぁぁぁっ!!ブベッ!?」

「うちの弟が呼び出されたらしいんだが、照会をお願いしたい」

「はい。結羽人様の弟様ですね……えっ?女神?」

「あ、はい。手違いで僕を女神として登録したみたいで…直せたり出来ますか?」

「カワッ…えっ?君が?妹ではなく?…生体パターンは男性…?」

 カウンター受付をしているお姉さん(顔の左半分が白い仮面で覆われている)が驚きながらも調べている。

 ───尚、後ろでガリガリと障壁を引っ掻いている怖い女性のことは全員スルーしています。怖いし。

「ああ、智者アロムレティア様と、覚者ユーム様、との会談と…修正は不可となっております…ぇえ?」

 あれ?受付のお姉さん、困惑している?

「まあ、だろうな…場所は?」

「あ、はい。第112号会議室です」

「既にお二方は」

「入室済みとなっております」

「…ありがとう。行くぞ」

「あ、はい。ありがとうございました」

 僕は受付のお姉さんにお礼を言って兄さんの後を追った。

 ───障壁を引っ掻いていた怖いお姉さんは警備?のお姉さん方に2人掛かりで羽交い締めにされていた。



 ロビーから一歩中に入ると、そこは112号会議室だった。

 何を言っているのか分からないけど、超技術とか魔法の類か何かだと思う。

「失礼する」

 兄さんはノックもせずに扉へと歩き、扉が消えた!?

「お、いらっしゃーい」

「来たか。話題の問題児達」

 室内にはゆる姉様と同じ位の幼女と、ピシッとしたお婆ちゃんがいた。

「失礼します」

 僕はおどおどしながら入室し、兄さんの横に立つ。

「まあ座って座って!」

「急な呼び出し済まんな」

「御大のお二方が急に呼び出すとはどういう事で?」

 兄さんは席に着くなり本題を聞く。

「まあ、まずは魔水晶のことからにしようか…結羽人、お前さん神聖水晶を作れるね?」

「時間を掛けて良いなら純度95前後で。短時間なら80~85%だな」

「…何故言わなかった?」

「いや一度言ったぞ?流されたから重要度が低いと判断しただけだ」

「馬鹿な…魔水晶の処理は喫緊の課題だと知っているだろう!?」

 お婆ちゃんが怒る。

「数年前、受付嬢に言った際に「誰でも出来ますよ」と言ってたぞ?現物見せても一瞥して鼻で笑われたな」

「待て。待て………先程連行された彼奴か!」

「因みにこれが俺のやった神聖水晶化のプロセスだ」

 兄さんは書類をテーブルの上に出す。

 お婆ちゃんはそれを確認し、小さく唸った。

「───かなりの技量が必要だが、道具を選ばない。いや、通常の水晶への工程で出来る最善の方法だな」

「で、友紀のは?」

「ああ、遠心分離等は兎も角、調理のやつは神聖水晶にするのにそこまでの技量要らずで的簡単な方法だと分かったよ。技術部が全員面白い顔をして楽しかった!けどね…あの水が問題だよ。あれは何処の水なのさ」

 幼女が僕を見る。

「えっと、箱庭神域の川の水です」

「「川の、水…」」

 あ、お二方とも難しい顔した。

「ここの水では出来ないのか?」

「無理だった。と言うよりもあの水の属性配分値が100%ではなく103%という意味の分からぬ代物だったのだよ」

「「ぇえー?」」

「…まあ、その直後にあんな危険物が出てきてしまったんでな。何処のトンデモ世界だと上層部は頭を抱えておる」

 トンデモ世界て…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る