412話 おにいさまとおでかけ
「ゆる姉様せお姉様!僕、兄さんとお出かけしてきます!」
スタジオに駆け込んできた友紀が蕩けるような笑顔と甘い声でそう言いだした。
「「かっ、かわよ!!」」
思わず叫んでしまった二柱の女神様はきっと悪くない。
白猫パーカーの友紀が可愛すぎたのが悪いのだ。
「やった!行ってきます!」
「っ!?待った!」
駆け出そうとしていた友紀をギリギリで止め、ユグドラシルは問いかける。どこへ行くのかと。
そして───
「運営本部に来るようにって言われたので、兄さんと行くんです!」
「「えっ?ナンテ?」」
蕩けるとかフニャフニャになるとかそんなチャチなもんじゃあ断じて無い場所を事もなげに言った。
「いってきまーす」
「「ちょおっ!?」」
※ 視聴者は完全にフニャフニャになっております。
そこは超巨大なドーム型の世界だった。
「ふえぇぇぇ…凄い!」
「いや、お前の所もドーム型世界だろうが」
「あ、そっか!でも規模が桁違いだよ!」
建物が僕たちみたいな大きさの人用の物と、巨人用の物があったり、かなり大きな広場があったりと驚きの連続だ。
「まあ、そうだな。巨人族や天龍、帝真神を強制縮小しても3~5メートルはあるからなぁ」
「わぁ!兄さん!」
僕が次に何か言おうとした時、何かを察したのか僕の口を軽く押さえた。
「ゆう。あまり喋るな」
「……」
兄さんが短く注意をしてきたという事は、何かあるという事だ。
「邪神等は居ないが悪気無く自分のモノにしようとする連中も居る。気を付けろ」
えっ?なにそれ怖い…と言いたい所だけど、うん。地球の神様と同じか。
「あと、絡んできたら殴っても適当にあしらっても良い」
「えっ?ここ無法地帯?」
「無法地帯ではないが、ある意味無法地帯だな」
「ある意味無法地帯…」
「んだぁ?傭兵が女連れてやがるぜ?」
と、突然声を掛けられて兄さんと共に振り向くと2メートル半くらいの大男が立っていた。
「ィエイモン…自世界はどうしたんだ」
「あぁ?テメェに心配される謂れはねえな!」
「そうか」
「嬢ちゃんよお、俺が受付までボゥッ!?」
横合いから殴られた!?
殴ったのは兄さんより少し大きいくらいの女の人で、棍棒で脇腹をフルスイングしたのは見えた。
「ごめんねうちの旦那が。傭兵さん。この前は助かったわ…1割ほどやられたけど、昔に比べたら格段に楽だったわ」
「それは良かった」
ザ・女将さんといった感じの女性は僕を見る。
「傭兵さんの彼女?」
「俺の弟だ」
「・ ・ ・え?」
「出頭するようにと言われたので兄さんと一緒にこちらに来ました」
「出頭要請!?…弟というのも信じられないけど、出頭!?アンタ何やらかしたの!?」
えっ?それほどのことなの!?
慌てて兄さんを見ると「よくあることだ」と普通に返された。
「いや、無いからね!?」
「週1呼び出されるぞ?拒否すると5分に1回メールが来る」
「「うわぁ………」」
それは、怖い。
「まあ、悪い意味で呼び出されたわけではないし、一応言っておくが、コイツはここで手続きを受けた神だぞ」
「え゛っ!?」
あれ?周辺にいた方々が一斉にこっち見た?
「……はぁ、やっぱりそう言った方が早かったか」
兄さんはため息を吐くと「スマンが急いでる。またそっちに寄らせてもらうよ」とだけ言い、僕の手を引いて歩き出した。
───うん。兄さんにはあとで説明を求めよう。まったく意味が分からないよ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます