612話 騒乱の空港、祟るエセ神聖職


 打刻を終え、自ブースへと向かう。

 館内はかなりピリピリしているけど、特務課うちだけは今回いつもの調子だ。

 深刻な顔をしているのは課長と巽さんだけという…

「巫女チャン様!オ初にお目にカカリマス!」

「あ、コイツは巫女ちゃんねるで戦闘ニキと呼ばれていた奴らしい。そのまま戦闘ニキとでも呼んでやれ」

 課長が容赦ない件について…

「………戦闘ニキ言いまス。よろしゅう」

 テンション最底辺の状態でそう言う戦闘ニキさん。

「宜しくお願いします。ダニエルさん」

「ファっ!?」

「課長、あいつは行きましたか?」

「ああ。すぐに走って行ったぞ」

 ペナルティー1解除しておこう。1だけは。

「じゃあ2~30体は倒せますね。それ以上は厳しいでしょうけど」

「アレは…大丈夫なのか?少しふらついていたが」

 課長の心配はもっともだけれども、アレに限っては心配要らない。

「アレはなんだかんだ言いながらも適度に力を抜いているんですよ。周りに合わせて疲れたフリをしているだけです」

「…まあ、時間内でサボっているわけでなければこちらも何も言わないが」

 少し難しい顔をする課長。

 まあ、アレをシバキ倒して制御出来るのって佑那くらいだしなぁ…

 と、電話が掛かってきた。

「───はい。すぐに伺います。課長、警察より応援要請です。妖怪が現れたとの報告が入りました。場所は───」

 途中まで報告していた言葉が止まる。

「どうした?」

「場所は羽田空港です」

 いや、それはおかしい。

 羽田空港は結界が張られているはず。

 しかも外国の空港のように聖職者が十数人居て巡回しながら浄化を掛けて回っていたはず…まさか。

「私が出る。巽は情報収集後に来るように」

「はい」

「課長、現場で聖職者の確認もしてください。もしかすると最悪の状況かも知れませんので」

「最悪?」

「元聖職者の可能性です」

「……分かった。強行班、行くぞ」

「「「はいっ!」」」



「巫女様、先程のはどういう事でしょうか」

 ミシェルさんとダニエルさんが僕の所へとやってきた。

 2人とも帰らないのかな?

「可能性1、聖職者だったが罪を犯し既に聖職者ではない人達が空港の浄化を担っている。可能性2、そもそも聖職者ではない。可能性3、中身が違う…まあ、この場合は可能性1と2が被った形になるんだけど」

「そうですね聖職者を悪魔等が乗っ取った場合は常時聖属性のダメージを受けるはずですし…ああ、そう言うことですか」

 ミシェルさんは納得したように頷いた。

「つまり聖職者ではなくなった人物を相手方が乗っ取ったと」

「可能性だよ?」

 しかしそれは重大なトラブルの元となる。

 日本国内での神聖職に関しての評価は低いが海外では違う。

 各国際空港では呪具、呪詛、憑きものトラブル対応や清掃スタッフのように施設内を聖光などで少しでも呪詛テロや憑依トラブルの可能性を防ぐために動いている…ハズなのだ。

 もしこれがおざなりだったとしたら?

 ……うん。日本、終わってるなぁ…と言う評価が下される。

 謝罪してお終いとは絶対にならない。

「モンスターの類いが聖光を撒かれている所を嫌がると言うのは常識なのでは?」

 ミシェルさんがそう言い、ダニエルさんも頷く。

 …ゴメンなぁ…日本ではそんなに知られてないのよ…主に生臭坊主やエセ新関係のせいで…

 本気で申し訳ない気持ちで一杯になった。


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