739話 万華鏡


 神鶏さんが毎日持って来てくれる卵のストックが恐ろしいことになっているので…卵料理と卵デザート作った。

 一般の人には絶対に食べさせてはいけない物が出来上がった。

 メレンゲクッキーやエッグタルト作りたかったんや!

 あと厚焼き卵とかに玉。オムライスを40人分。

 ………でもね、それでも25個しか使ってないんだ…まあ、保管効くからいいけど。

 卵料理は何回かに分けて出そう。

 神様方、あったらあるだけ食べるから…


 改めて思うんだけど、あの兄さん修行、凄いんだけど…

 いま、体が凄く楽だし、感情の揺らぎも落ち着いている。

 僕は人でありたい。

 例え神になっても、心は人でありたい。

 兄さんは人の心のままである限り悟りを開き次に進むことは出来ないと昔佑那に言っていた。

 ただ、その兄さんは到達者となり、その先へと進んだ。


 協会に入ってすぐの頃、一度だけ法師のお爺さんと悟りについて話をした。

 その時、お爺さんは「悟りは千差万別であって自分もそうだが仏教徒全員がお釈迦様の初期の教えを守っているかと言えば…初っ端から守っていないんじゃな、これが。この時点で悟り云々いってもなぁって思うんじゃよ。儂」

 そう言って笑った。

 まさかの否定?えっと、お坊さんが?と慌てた記憶がある。

「悟りと言っても色々ある。悟りの段階云々もお釈迦様本人がそう記述しているわけでもない。

 仏教は大元の教えから大分変わっておるのは文献含め色々な資料を見れば分かる。初期仏教と大乗仏教、上座部仏教で相違点や矛盾点がある時点でどういう事だとなってしまう。

 まあ、爺の長話を簡潔に言えば好きでもその道に居るわけでもないのならお釈迦様の行ってきた事。思考と対話をすれば良いという事じゃ。

 善行を為すことで他者との対立を丸め。対話をすることで更に磨く。分からぬ事は聞き、より良くする方を考え、不幸や不和を減らす。

 ほら、苦しみはだいぶ減った。ただ周りと相談してもどうしようもないものは「そう言う事もある」と諦めて立ち去るか、修行と思いそこに残り受け入れる…考え方と受け入れ方じゃな。

 それにな、書物にあるから正しいわけでもなければ言葉としてあるから絶対というわけでもない。

 お前さんの出来る事を思考し、行動し、対話せよ。ただし、より良くなる方向に、じゃぞ?」

 そう言われて以降、引っ込み思案だった僕は頑張って周りときちんと対話をするようになった。

 課長は元々優しかったけど、良く声を掛けてくれるようになった。神様方にお手伝いをお願いするようになったのもこの頃からだったと思う。

 あの頃の僕の話し方を気味悪がる人もいたけどそれは仕方ないと諦めて別の問題事へと目を向けていった…


 ───うん。今度課長にあの法師のお爺ちゃんのこと聞いてみよう…じゃなくて!

 でも、思い出せば出すほど悟りとは何か、ではなく悟りは必要?となっていく。

 いまの僕には必要ないな。うん。

 …あとで兄さんとせお姉様辺りに悟りとか到達者について聞いてみよう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る