393話 承認と出撃

 協会内は騒然としていた。

 それはそうだ。課長達は慌てて関係各所に問い合わせをし分かったことは、

 半壊の連絡も、異界化に関する連絡も一切入っていないと言うことだった。

 定時連絡がないと自衛隊は動き出していたらしいけど、薄霧が青森全土を覆っていて、更には応答もないため陸上部隊が向かっているらしい。

 さて、どうしたものか…と上の方々は頭を抱えている。

 僕は僕でせお姉様とメッセージのやりとり中。


【支援部隊経由で穀物類とか回しても大丈夫ですか?】

【せお:バンバン持ってって!アディエーナが悲鳴上げてるから減らさなきゃ!】

【待って!その倉庫、世界中からのアクセスがあって減っているんじゃあ…】

【せお:生産がだいぶ上回っていて大変な事になってるよ】

【えっ?】

【せお:小麦だけど、現在の増産計画だと明日開墾分で年間1.6億トンになるよ】

【なんで!?】

【せお:五穀の神々の本気のお遊び×リポップシステム導入=超高速生育収穫】

【意味が分からないよ!?】

【せお:1ヘクタールに小麦を植えて10分1回自動刈り取り。1時間で21トン】

【年間4~5億トンは必要じゃないの?】

【せお:それはフルで面倒見た時だよ?駄目だよ。手助けするとしても3割まで!】

【せお:900ヘクタール作るんだって。だから年間1.6億トン】

【土地は?】

【せお:新たに1800ヘクタールは確保済み。上の階は一大農場地帯だよ!】


 前よりケタが違う…!

 神様方のびのびとしすぎじゃないかなぁ!?助かっていますけど!ありがとうございます!

 思わずため息を吐いてしまう。

「姫様?」

 巽さんが心配そうに僕を見ている。

「ちょっと食料調達についてね…穀物類はどうにかなりそうかな、って」

 えっ?ちょ、巽さんが何故か悲しそうな顔してますが?

「姫様…ご無理をなさらないでください…」

 えっ?いや、無理してませんが?

 巽さんなんか今日は精神状態が不安定じゃないですか!?

 大丈夫?ギュッてする?「今こそにゃんこはいぱぁを使う時です」って聞こえた気がしたけど、きっと気のせいだ!

「巽さん。僕ちょっと神域に行って早めに何とかするための指示を出してくる」

「姫様!?」

「フィラさん、ゲートを」

「良いの?」

「巽さん。10分で戻って来ますので」

 そう言ってフィラさんの開いたゲートから箱庭へと向かった。


 箱庭に着くと結構騒がしい状態になっていた。

 白城さんは一度ここに戻って追加支援の用意をしているし…

「白城さん。一緒に神域の倉庫に行きませんか?穀物類を自由に使って良いとの許可を得たので」

「宜しいのですか?」

 白城さんは少し驚いたようにこちらを見る。

「むしろ本部に一時保管する分まで持っていきましょう」

 僕は白城さんと連れ立って神域の倉庫へと向かった。

「……凄いですね」

「とりあえずお米4俵と、豚肉と、大根と…人参、ゴボウ…」

 結構な数量を確保して再び箱庭へと戻る。

「あれだけあればこちらの物資と会わせても数百人は食に困りません」

「一時的にはね…あとは戦力の強化だけど…白獅子さーん」

「ガウッ?」

「白城さん達を守って欲しいんだけど、良いかな?」

「ガウッ」

「1体だけで良いと思うんだけど…」

「ガウッ!」

「うん。お願いね…と言うわけで、この子を白城さんの護衛として付けますので部隊展開は多めにお願いします」

「…分かりました。拠点防衛の見直しをします」

 苦笑しながら白城さんはそう言ってくれた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る