60話 TS化した僕は落ち込む

 食事を終え、片付けも全て完了。

 食後のお茶を出し、お茶では無くお酒を飲む神もいる中、せお姉様が息を吐いてこんな事を言い出した。

「さっきの君達の話を聞いて少し確認したんだけど…国内はほぼ落ち着いているけど国外に相手方の主力が向いているみたいだね」

 と。

[その割には今日を含め結構ヤバ気な事が増えている気がするんですけど…]

「あの程度は国内に昔からいたモノを焚き付けて暴れさせている程度だよ。この国は既に昔の契約や結界などはほぼ意味をなしていないから」

 なんですと?

 せお姉様は四つ指をたてる。

「神器に神秘性を持たせるために見ないという制約を課していたのにそれを破り」

 指を一つ折り曲げる。

「神威を借り受けて継承する儀式を途中で簡略化し途切れさせた事で古くからの神を介した約定を破棄し」

 指をもう一つ折り曲げる。

「接触禁止の約定を幾度となく破りその都度要らぬ軋轢を生んだ事により国内の神々が要らぬ気を回し、結果神々の力の衰退を招き」

 最後の指を曲げる。

「文明化という名の下に幼稚な知恵を振りかざして優劣をつけ信仰を大幅に失い、結果僅かに残っていた秘すべき系譜の者達すら務めを果たせずにこの様よ」

 せお姉様は嘲笑を浮かべた後、深いため息を吐く。

「名のある大妖などは未だ出てきてはいないし、妖魔等々に対して元来勝てぬから我等を頼っていたのにこれではな…まあ、恐らく半数近くは討ち取られているとは思うが、人がいる限り自然がある限り消滅する事はない。が、其方等が減らしてくれたおかげで国内で最悪の事態というのはある程度予測が立てられるようになった。礼を言うぞ」

 ───せお姉様。

[酔ってますね]

「酔ってるねぇ…」

「まあ、色々不安抱えていましたから。しかしたった一本で酔うとは思いませんでした」

「それだけ気を張っていたのでしょう…」

 ふと思った事を口にする。

[結局のところ、人が恐れ敬う事を忘れた結果、良くも悪くも作用して、更にダンジョンがそれらを仲間?として取り込んだ結果が今って事ですか?]

「あー…なんか聞いた話だと、結界や契約等々は人が破りまくった結果大半が無効化しているけど、力を貸している神のネームバリューで牽制できているレベルみたい。ただ、ダンジョンが出来ていなくても十数年以内には何らかの事が起きていたようだよ」

[でもそれって日本国内に限っての話ですよね]

「そ。他の所は凄いよ?場所によっては信者の半数が信仰する神の力を削ぐ行いをして結果どうしようもなくなっている所もあるし」

「あるあるですね」

「まぁねぇ…僕達は最悪単独で動けるから良いけど、その地に縛り付けられて延々と真逆の事をされて虫の息って状態を保護したりするのはまあ、ちょっと辛い」

[…本当にご迷惑をおかけしています]

「───そういえば」

 兄さんが何か思い出したように呟く。

「ん?どうしたの?」

「先月、外国の知人からある探索者のグループが悪魔召喚をして悪魔をダンジョン内にいる悪魔と戦わせるという実験をするらしいと」

 …えっ?

 室内の兄さんとせお姉様以外の全員が固まった。

「ちょ、何処の地域!?」

「確か○○です」

「……まだそんな事していないみたいだね。ただ、それをしたら恐らく周辺一帯は壊滅するだろうし、悪魔憑きになったら今日ゆーちゃん規模の事が出来る人がいないと駄目だよ」

[あ、じゃあ安心ですね]

「…この子の自己評価をどうやったら上げられるのか教えて欲しいんだけど…」

「無理ですね。一応知人に連絡を入れておきます。地区から離れるように、と」

「はぁ…ちょっと向こうの連中に連絡しておくね」

 ゆる姉様はため息を吐いてメッセージを送った。


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