391話 救援と窮状
SIDE:日本
「死者は出ているものの最悪というレベルでは無さそうですね」
天馬に跨がった女騎士は周辺を見渡してそう断ずる。
「そうッスか?戦えなくなっている時点で死と同義だと思うんスけどね」
女性…タイムは首をかしげながらそう返すと、
「死にそうな人がいるんでちょっと急ぎでゲートオープンッス!」
そう大声を発した直後、タイム達の周辺一帯が歪み、その歪みから軍用車両と歩兵部隊が姿を見せた。
「第一、軽く当てろ!設営班急げ、救急救命士はトリアージ班と応急班、緊急処置班で動け!第二は救急救命士と共に患者搬送。重装と護衛は迎撃だ!」
白城の号令と共に第一と言われた20名の兵が妖魔達に向けて掃射を行う。
そしてそこで本来あり得ない現象を目撃した。
泥の巨人の足が破裂し、小鬼が普通に被弾し倒れ、土蜘蛛が穴だらけになったのだ。
「…は?」
力尽きてへたり込んでいた者、痛みに呻いていた者全員がこの光景を見て呆然となった。
聖属性などで強化してもそこまで劇的な効果は見込めないはずなのに、容赦なく打ち倒している。
「ライン確保!」
「拠点設営完了!」
「重傷者収容、緊急治療開始します!」
そしていつの間にか設営された大型テントやパネルハウスに負傷者全員が収容されていた。
「ここの責任者と話がしたいのだが」
白城が大剣の男に声を掛ける。
「最初の強襲の時に車ごと潰されました。軍人さん達はそこにいる二等陸曹の姉さんがここにいる軍人の中で一番高い地位にいます」
「協会の責任者は誰かな?」
「……亡くなった2名がそれぞれのトップでした」
「それは不幸と言うべきか、迂闊と言うべきか…」
完全に駄目になっているワンボックスカーの方を見た白城は苦々しい顔をする。
「しかし何でこんな中途半端な人数で移動していたんスか?」
周辺を見て回っていたタイムがひょこりと姿を見せ、そう聞いてきた。
「食料が尽きてしまい、秋田方面へ救援要請に向かっていました」
「えっ?」
まったく予想だにしなかった内容にタイムは面食らった。
「陸曹、二等陸曹!食料が無いとはどういう事かね?」
白城の方も真偽を確かめるために二等陸曹と紹介された医療班の女性に声を掛ける。
「ぅえ!?はいっ!昨日駐屯地が半壊致しまして、食料庫も、周辺都市部や田畑も泥にまみれてしまってですね…」
「半壊?そのような情報は受けていないのだが…それに例えそうなっても審議の石板がある以上最悪の食糧難は…」
突如タイムの背負っていたデイバッグからアラームが鳴った。
「あれ?電波の状況がおかしいッスね…ああ、ゲートの周辺は大丈夫ッスね」
「待て、タイム殿。今電波がおかしいと?」
「なんか通信が途切れたッスよ…それは良いとして半壊や食料に関して連絡は政府にしたんスか?」
「亡くなった一等陸尉は連絡したと…」
「協会本部に電話連絡した人いるッスかー?」
「俺です」
大剣の男が手を挙げる。
「雰囲気は聖職者っぽいんスけど…聖騎士ッスか?」
「見習い聖騎士で…あれ?聖騎士になってる!?…失礼しました。俺のスマホは無事だったので俺がダメ元で本部に電話をしました」
「「………」」
タイムと白城が顔を見合わせる。
「二等陸曹、君のスマートフォンの電波状況は?」
「現在圏外です」
「通信士!妨害確認!」
「超低濃度の空間侵食を確認!現在護衛士官殿に天蓋聖域の展開を要請しています!」
「あっ、電波が…電波が入った?」
「………タイム殿、主様に緊急で伝えてくれ。ダンジョンとは別に、空間侵食…異界化が起きていると」
「この映像がそのまま流れているので問題無いッス」
「では…通信士、本部に通信士の応援を要請。ここに防衛拠点を建てる!」
白城の宣言と共に歪んだ空間から通信機材を背負った2名の通信士が姿を見せた。
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