680話 兄者との特訓と、戦力把握
「兄さん、その差って純粋に力の差?」
「まあ、それもあるが世界と転移者の空気の違いもある」
「空気の違い?」
どういう事?高山トレーニングとかのかな?
「例えば初めに跳ばされた先の世界、その大気には魔素のようなモノが満ちていて、基本それを使った技術でなければ敵を倒せないんだ」
「えっ?詰みじゃん」
顔をしかめる佑那に兄さんは小さく肩をすくめる。
「外皮や血液中の魔素さえ抜けば勝てるし、関節技や駆動部分を破壊すれば問題は無いぞ。それと」
兄さんは虚空をノックし、直後───
ボッ
「こうやって大気を殴り相手にぶつければ俺に魔素がなくても無尽蔵の魔素で相手を殴れる」
「………4、50メートル先の白獅子が吹き飛んだんだけど…」
「アイツらはああやって偶にボールを当てて躾けないと調子乗るからな」
…兄さんは、兄さんだった…
佑那が大慌てで紅葉さんを送り届けに行き、入れ替わるように白城さんと板額さんが箱庭へと戻って来た。
「お疲れ様です。どうでしたか?」
「彼女はかなりのポテンシャルを秘めています。何よりも目が良い…ですが、それに頼りすぎています」
「兵達は…そこそこです。現段階で小規模の群れた小鬼は倒せますが」
まあ、それでも十分なんですけどね!
「彼女は守りについてであれば鬼の襲撃を受けても問題無く防ぐ事が出来ますし、長時間平然と守りきれるだけの結界です」
「流石引き籠もりのプロ…」
「範囲も拡大しているようですので───あの、先程からずっと神兵達が吹き飛ばされているのですが、何をしているのですか?」
とうとう白城さんが我慢できずに聞いて来た。
まあ、数メートル背後で神兵達が吹き飛ばされているから仕方ない。
「訓練らしいです。兄さん相手に何処まで粘れるかという耐久訓練?」
「耐久できていないような…」
板額さんも報告しながらも顔色悪かったし…やっぱりそうだよねぇ。
「しれっと救急救命士が待機して遠距離回復術を放っているようなので…拷問ですかね?アレ」
「本人達がやる気に満ちているから良いと思いますよ?」
「あれ、参加しても良いのですか?」
板額さんが完全武装しているぅ…
「良いんじゃないですか?不意うちから参戦どうぞ」
「「では」」
あっ、白城さんも参戦するんだ…
「……兄さん。私出て1時間以上経っているよね」
佑那が戻ってきて僕の横に立つ。
「うん」
「……皆タフすぎない?」
うっすらとこの辺りに慈母の癒し・改を流しているのバレてるぅ?
「………てへぺろ」
「兄さんが犯人やったかぁ…可愛いから抱きつくだけで許す!」
そう言いながら佑那が僕に抱きついてきた。
「佑那は参加しないの?」
「…アレに参加する前に流れ弾で召されそう」
「メリアさんも参加してとんでもない事になってるしねぇ…というか、箱庭の主力メンバーvs兄さんという状態なんだけど…」
マイヤは見学。リムネーとラヴィ姉さんは神国のお仕事で参加していないけど…見事に圧倒されてるなぁ…
あ、異相回避を封じたのにバックステップ緊急回避で結界をすり抜けた!?
「……これ、兄さんを止めるの無理じゃない?」
「止めるのは簡単だけど、倒すのは無理だね」
「止められる?」
「皆動いているから小腹空くと思って軽食を用意したんだ」
「それは、止まる(確信)」
皆食事の前では大人しいからね!
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