608話 ディフェンスと、セルフディフェンス


 神域に戻るといつもの光景に戻っていた───が、リビングに新しい扉が1つ。

「………」

 なんか、ストーリーとかでは僕がこの扉を開けて次の世界へとか、新しい島へと繋がっていて~って言うパターンなのかも知れないけど、現実はどうなのか分からないので近寄りません。

 僕は自室へと戻った。


「兄さんから女の人の臭い…課長さんと別の人の臭いがする!」

「………佑那?」

「あ、はい。冗談でも茶化す場面じゃなかったようで…ゴメンナサイ」

 静留さんは真剣な表情でネットの動画速報を見ている。

 映し出されているのはこのマンションの前、花壇の撤去と他にも爆発物がないか確認している処理班の姿だった。

「大丈夫だった!?」

「課長が爆発に巻き込まれて、僕が狙撃されたくらいですけど問題なしです」

「「大問題だからね!?」」

 いや、正直言うと狙撃は兎も角あの爆発に関しては花壇以外はダミーの爆発(幻影)だと思うんですよ。

 対応したのは天之御中主様ですし。

 課長が超反応しても爆弾の十字砲火は受けると思うし、防具やアイテムの守りを抜かなくてもそれらの埃や破片が付着するはずだけど…それもなかった。

「静留さんに重装救命官を派遣しておくからこういったパターンには対応可能だよ」

「佑那はこれくらい想定できないと駄目だよ?」

「無茶言わないで!?ただの武闘派現役大学生よ!?」

 自分で武闘派言うんだ…

「対テロについて兄さんから学んだんでしょ?」

「確かにそれにはあったけど…本気で常在戦場だよ?あれ…疲れるよ」

 げんなりした顔の佑那だけど、それが当たり前レベルにならないと狙われたら保たないと思う。

「このままだと佑那は死んじゃうかも知れない…」

「いやいや死なないからね!?」

 慌てて否定するけど、いや本当に危険なんだからね?

 防御機構を抜き、リストバンドの防御すら抜く攻撃なんてほぼ無いと思うけど。

「だって疲れるってだけでセルフディフェンスを止めちゃうんだもん…」

「だもんって…」

「佑那ちゃん。最後の手段は本当に重要よ?」

 静留さんが佑那の肩にポンと手を置く。

「私も会社のセキュリティー部隊は定期的にスパイクリーニングしているし、実践訓練もしているのよ?」

 やっぱり静留さんも兄さんの関係者だよ…うん。

「静留さん…」

「私がどれだけ誘拐されたり襲撃を受けたと思ってるの?大学を出てからは全て撃退できているわ」

 ドヤ顔の静留さんには申し訳ないけど、疫病神に憑かれてないですかねぇ?

 いや、憑いているような気配はないけど。

「佑那くらいって事だね」

「ううう~~~っ!外ではきちんとしてるもん!」

 みんなのお姉様だもんねぇ?

「ここでなら良いけど、実家含めここ以外では危ないと思ってよ?」

「そうね。私は…実家にまだあのアイテムがあるから問題無いけど、そろそろ効果が消えそうなのよね」

「時間限定アイテムですか?」

「効果範囲が少しずつ狭まってきているから」

 それ、時間の問題ではなく、それだけ多くの襲撃を受けているという事では…

 佑那を見る。

 佑那の表情も少し引きつっていた。


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