607話 暴露と、再暴露と
課長に部屋へと連れ込まれた。
「岩崎。神になったというのはどういう事だ!?」
ああ、やっぱりそこに戻るんですね。
「課長、落ち着いてください」
「───声を普通に出せるようになった時から、だな?」
流石課長。これ以上いう事ありませんよ?
課長に神になるまでのことを話す。
家庭事情、死にかけた事、神様に助けてもらった事、成長がほぼ止まった事、職業劣化に見せかけた特殊職授与、そして神々との交流からほぼ瀕死状態の大宜都比売様の復活。そしてそれらの功績を以て神位を得た事───
慈母になってから本当に僅かの間にここまで色々な事が起きたんだなぁ…
そんな事を思っていたら抱きしめられた。
「課長?」
「岩崎…君は本当に、無理をしすぎだ…そんな目にあってまで、どうしてそんな真っ直ぐに、優しくいられるんだ…」
「?課長。目を閉じたら死ぬかも知れないと思った時『僕が今目を閉じて死んでも他のみんなが幸せでいられますように』って思いながら眠り、起きたら感謝をする。
それを続けているとそれだけで十分に思えてくるんです。みんなに幸せを少しずつ還元していけば、僕が死んでも家族が、知り合いが、誰かが少しでも幸せになれたら僕が居なくなっても寂しくないかなって」
ちょっと言ってて上手く言えなくなったけど、少しは伝わったかな?
「~~~~~!」
あれ?なんか抱きしめる力が強くなってますよ?
肩がちょっと濡れて…課長、泣いてません?
「神になってもみんなのためにひたすら神々との架け橋をし、人々のために尽くして…にもかかわらず人は、君を…っ!」
「まあ、それは仕方ないことですよ。僕は好きで勝手にしていることですし」
「だがっ!」
「僕は神様ですよ?傲慢にやりたいことを勝手にしているんです。それと、神ですが人でもあるので」
課長は少し体を離し僕を見る。
やっぱり課長は泣いている。
そっと涙を拭う。
「岩崎───」
「博子ー?貴女怪我ァ………失礼しましたぁ…」
「あ、部長お帰りなさい。課長に怪我はありませんよ」
「ちょ!優子!?待って!まだ何もしてないから!」
課長は慌てて部長を追いかけていった。
部長にも同じ説明をしたら同じように抱きつかれて泣かれた。
…むしろ課長以上にガチ泣きされた。
「まあ、この事はあまり口外しないようお願いします」
「口外しないと言うよりも、配信のリスナーとかはそれに近いレベルで貴女を信仰していると思うんだけど」
「あー…今うちにいる教会を辞してまで来る人間とか、先代大聖女とか、会いたいが為に日本まで渡ってくる狂信者とか…」
「もう宗教化している気がするけど…あ、そうだ。巽には言わない方が良いわ」
「えっ?」
部長の台詞に僕は戸惑う。
「ああ、そうだな…アレのことだ。確実にバレるレベルで崇めるぞ」
想像する───うん。確実に言う。礼賛する。
「それはちょっと…」
「言いたいわけではないんだろう?」
「はい」
もう即答だ。
「であれば積極的に言わないという事で」
「良いのかなぁ…まあ、はい」
問われない限り言わないという事で話をまとめた。
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