732話 中央融解


「放流しましょう!ネットの大海へ!そしてこの餌を多くのネット民に食べさせるのです!」

 課長からのメッセージをどうしたものかと話し合っていたところにジャンヌさんがそう言い出した。

「きっと神もそう仰っています!

「それ、神ではなくてネ申じゃない?大丈夫?」

「我等が主様へお願いがあります。そのメッセージをメールで、証拠付きで欲しいとメッセージを送って戴けませんか?」

 ジャンヌさんが急に真剣な顔になった。

「証拠?…まあ、そのまま送りますね…メールアドレスは、会社ので良いかな」

 メッセージを送り、ため息を吐いた。



「ちょっとせっちゃん今、ゆーちゃん宛にメールが来たみたいなんだけど」

「ナチュラルにゆうくんのプライバシー覗くのはどうかと思うな、僕」


『巫女様のプライバシー』

『巫女様は無事なんですか!?』

『巫女様の安否が気になりすぎて銃撃命中率が9割から5割まで落ちています』

『巫女様の安否を心配しすぎた俺の部隊長がノーコンしすぎて辛い』

『職務を果たせ部隊長w』

『巫女様の無事を祈るお百度参りをしています』


「いやいや私だって何の問題も無ければにこやかスルーだよ?でもさ、このメール1つで世界のパワーバランスが崩壊するとしたら?」

「そんな恐ろしいメールってありゅ?」

「ほらこれ」

 協会本部より送られてきたメールを公開するユグドラシル。

 そこに記載されていたことは巫女こと岩崎友紀を中央協会権限で強制出向命令───要は徴集だが、それを命令してきたとあり、それに反発し部長と課長は退職しようと考えている旨があった。

「ね?」

「日本の切り札と首都地域を1人でカバーしている守護者を失うのかぁ…部長さんと課長さんが協会辞めたらゆうくんも辞めるし、職員も結構数反発で辞めるよね?」

「生活がかかっている人は辞めないとしても、最低でもあの課の人間は全員辞めるだろうね」

「本部オワタ」

「責任追及は国から中央協会に行くだろうし、世界各国としてはこれが切っ掛けとなって能力の高い人々が神国に逃げたら大事だよね」

「その前に1つ」

「なに?」

「中央協会って、仕事してるの?」

「…………ゆーちゃんのスキル考察の功績をかすめ取ったり、各国の協会からの情報を吸い上げて精査せずにばら撒いている感じ」

「利権欲しいだけの役立たずなんだね!」

 良い笑顔で自分なりの結論を出し良い笑顔の祓戸にユグドラシルは「まあそんな感じ」と頷く。

「それとこの音声データ。聞いて聞いて」

 続いて添付されていた音声データを再生すると長谷川部長に対し愛人にしてやるだの中央権限でどうとでも出来るだの色々言っている総長の一方的な通話内容だった。

「───ギルティ」

「ギルティだねぇ…これを偽りだというのなら私達が…いや、十王と大天使達でも良いかな?それらの元で絶対審議をさせてあげるね!」


『公開審判お願いします』

『政府が中央協会に毎年結構な金額を寄附しているんですけど』

『中央って役立たずなの!?…あ、そっか。派兵権限ないのに人寄越せって変だ!』

『巫女様の功績をかすめ取って…そいつぁ聞き捨てならないなぁ?』



 配信の最中全世界が時間関係なく中央協会に怒りの連絡や拠出金停止、総長解任要請や、果ては組織解体、独自協会の新立ち上げなど大炎上どころの話ではなくなっていくのを女神2人はにこやかに伝えていった。


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