731話 Be Yourself
SIDE:神域マンション
「ああっ、ああああっ!なんてっ、なんて罪深きものを!」
「おお巫女神よ!貴方は我々に葡萄酒ではなく日本酒を飲めと!仰るのですか!」
「いや、ワインデキャンタで飲んだどころかハイボールも飲んでいましたよね?」
適当にツマミをと言われスタッフが玉ねぎとザーサイのピリ辛和えやキュウリとスイカの皮の和え物、揚げ出し豆腐を出された大天使達の騒ぎっぷりに料理長権限で出禁にしようかと本気で悩むウェスタだった。
「…よし、そこまで。一度休憩を挟もう」
板額が休憩の声を掛けたと同時に全員がその場に崩れ落ちる。
「殻を破る直前だから一度止めたが、全員何となくでも分かるか?」
その問いかけに全員が首を横に振る。
「……ふむ。衛士諸君。ここが何なのかは理解しているか?」
全員が頷く。
「紅葉殿。貴女はここが何なのかは理解しているか?」
「神域のジムで、通常よりも層が違っていて…神気が既存の神社等よりも桁違いに満ちていると言う所ですか?」
「及第点」
バッサリだった。
「一応合格ラインだったという事で満足です!」
「ポジティブな引き籠もりって何だ…で、足りない部分だが答えは途中まで言っている。だから及第点なんだが…分かるか?」
そう言われた美月は首をかしげ、衛士達も首を横に振った。
「異相なのは確かだ。神気が既存の神社よりも…というの部分だが、神気と神圧…神威だな。その2つが常人では呼吸が出来ないレベルとなっている。ぶっちゃけ疑似神仙界第3階層…仙人などではなく従属神などの住む世界と同等の濃度だ」
全員が目を見開き、固まった。
「ただ、このレベルは神々の食事の席では割と良く発生する量と圧だ」
「あの、割とよくあるって…」
「好物が出た際に奪い合いとなり軽く終末かと言いたくなる力を解放してまで奪おうとする大人気ない神が居たりするからな…稀に1階の食堂でも起こっている」
「…」
美月は何も言えず、衛士達の顔色も悪い。
「そんな中現在常連となっている4カ国の大使方とマンションスタッフは…精神防御力含め耐術式防御力ならばおよそ千年前にいた法師連中よりも確実に上だ」
話しながらも板額は内心「慣れって怖いよなぁ…私の生前あんな事あったら即神職に就いて終生信心していただろうな」と思っているが、表には出さない。
「慣らされすぎて強くなったという事ですか?」
「そうだな。慣れと食事だ。お前達も食べているだろう?食堂から提供される握り飯を。あれは神が作った米であり、直会というよりも直接下賜なので…内包神気も吸収率も段違いに多い」
衛士達は各々顔を見合わせ自身の胸元に手を当てる。
そこで何かに気付いたのか全員が板額の方を見た。
「分かったようだな」
「えっ?」
「此奴らは蓄積されたモノを知り、漸く殻を破ることが出来るという事だ」
「私はまだ分からないのですが…」
「まあ、人だからな。ただ、自分をよく視てみろ」
「視る…」
言われて自身を視る。
「!?」
そこで気付く。自身の体を覆っている結界がより強固になっていることに。
「お前さんの場合は無意識に自分の力の拡張へと使っている。そこを正せばもう2段階は上に上がれるだろうよ。
ただ、現時点の物理含めた防御力は尋常じゃない程強いからな?ここで満足するか進むかは自身で決めろ」
板額はそう言うと「ただ、進まなければあの方の側には居られないだろうが」とニヤリと笑い、言い放った。
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