1064話 強力変若水(意味不明)
「うむ。見事な縛り方だ」
庭先で縛られている門弟達を見て満足げに頷く香椎のお爺さん。
いや、それよりも目を覚まさないこの人達、大丈夫?救急車呼ぶ?
どうやら今日は月一の全体指導の日だったらしい。
で、指導をしていたら全員が狂い始めたと…
「十数名は即座に昏倒させたが、此奴らは直ぐに逃げおった」
「あの…香椎のおじさん、普通に出勤していましたけど?」
むしろ僕に迷惑掛けてましたが?
「ああ、アレは自由にさせておる。あと一歩、自身で会得せにゃならんからな」
「才能が無いから努力しろ、でしたか?」
「そういう儂も才能なんて都合の良いものは持ち合わせておらんがな」
笑いながらそういう辺り優しいお父さんだよなぁ…
「あっ、マイヤ。お爺ちゃんに変若水少し飲ませてあげて」
『うんっ!おじーちゃん、はい!』
「うん?お水かい………違うな。これはかなり霊験あらたかな代物ではないのか?」
「ちょっと体が若返る水ですよ」
「本物の変若水か…言いたいことは沢山あるが」
そう呟きながらクッと飲んだ。
「まあ2口分位ですから20歳若返る程度ですよ」
「そうか。お嬢ちゃん、ありがとな」
『うんっ!おじーちゃんいっぱい長生きしてね!』
「……涙出そうなんじゃが?ええ子過ぎんか?」
「自慢の娘達ですから」
「まさにお前さんの子じゃな。佑那嬢ちゃんだと確実にこうはいかん」
「私も良い子やろがい!」
「良い子(笑)」
「只々子」
『ねむっているパパにだきつこうとしなかったらいい子!』
『ノーコメントです』
僕、香椎のお爺さん、マイヤ、リムネーの順でまあまあ酷評だ。
「順当ですねぇ!」
「しゃらっぷ!」
とうとう玉藻お姉さんにまで…
「ぬっ?ああ、引き取りに来たのか」
板額さんが顔を覗かせた。
「誰か来ましたか?」
僕が聞くと板額さんが少し渋い顔をし、頷く。
玉藻お姉さんが「そうそう」と話し出す。
「先程邪神が来ておりましたよ。ねぇ?」
「ええ。とりあえず一文字に斬ったら逃げていきましたが」
「いや、アレは逃げますよ。斬撃で空間が歪んだんですよ?」
「神を斬る機会なんてそうそうないので絶好の機会だったのに…無念でした」
笑い合う玉藻お姉さんと板額さん。
「やだ、怖い…この平安末期コンビ」
「佐那さんではなく板額さんと出た時点で決定事項じゃないか…」
そういうところで引きが良いな…恐らく板額さんだから追い返せたと思うんだ。
「でも、来てたんだ…」
「お探しの他化自在天ではありませんよ?木っ端神人です」
んんっ?
「神人が、外を出歩ける?」
「出歩くと言うよりも相を渡った感じでした」
うん。あり得ない。
この辺りに重なる相はない。
というのも、そういった事を警戒して実家周辺に関しては異相の空白地帯となっている。
あるとすればどちらかと言えば妖精界だ。
どんなに広げても広がらない幼子位しか入ることのできない所であり、出る場所が必ずズレるという厄介な性質を持っている。
あと、妖精達と神はそんなに相性が良いわけではない。使いっ走り扱いする側とされる側だけに。
妖精側で何かあった?
…なんだか嫌な予感がした。
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