689話 全ての人の魂の器
うん。祓えたけど、何故この空間内に入り込めていたのか。
何故、課長に憑依できたのか。
「あの、岩崎?」
結界起動後は中の悪霊含め弾き飛ばすはずなのに…うーん。
「いやあの、その、胸に顔を埋められるのは私としてはご褒美なんだが…な?」
課長を鑑定しないといけないかなぁ?
課長を起き上がらせてどうして取り憑かれていたのか聞いたら本人はまったく自覚が無かった。
「可能性があるとすればあの黒い人型のナニカを斬った際に僅かに飛沫が付着した可能性だが…有り得るのか?」
「あり得ないですね悪霊や呪詛含め弾くはずなので」
まさか、ずっと中に居た?いや、それも無い。
操ることは出来ないだろうけど…何故?
恐らくアレは女性の霊。
「課長、親族や知人の女性で最近亡くなった方はいますか?」
「…あー、一昨日亡くなったなぁ」
直近過ぎない!?
「そこそこ親しい人間だっただけに少し抜けて葬儀には参加したぞ」
あー…その人が普通の状態で憑いて、悪霊化した?そんな短時間で?
「ああ、そっか」
本人は守ったけど、本人に憑いていた善良な霊が汚染されてしまった訳か。
「何か分かったのか?」
「はい。多分、その親しい人の霊が課長に憑いていたんですが、黒い人を斬った際の飛沫で憑いた状態のまま汚染されてしまい、悪霊化仕掛けていたのかと」
ただ、悪霊化といっても見境亡く守ろうとしたり、無理にでも休ませようとしていたんだよねぇ…
「……そうか。申し訳ないことをした」
「恐らく完全な霊体ではないはずなので本体は成仏か昇天はしていると思いますが…」
「んっ?どういう事だ?」
「と、言いますと?」
「いや、一般人だぞ?本体とか分体とかあるのか?」
「ありますよ?霊体と魂の関係ですから。魂を核に霊体は七つあります。まあ、魂が七つあるとも言いますが、体と言う器には7つの魂が満たされて初めて完全です。
ただ、何らかの切っ掛けで失ったりこぼれ落ちた場合、戻すことが出来れば良いのですが失った場合はその空いた部分にナニカが入り込む場合があります」
「もしかすると、私もいくつか失っている可能性が?」
「課長の場合は器の拡張が早すぎて魂や霊体の拡張が間に合っていないために空きスペースが出来ている可能性があります」
「…どうすれば良い?」
どうしよう。課長を箱庭に連れて行けば解決なんだけど…長時間保つかどうか…あと部長と巽さんもかなぁ。
「課長。部長と巽さん含め3人で僕の試練を受けますか?」
「試練?」
「はい。器に神聖の力を少し加えて内外強化するのですが…あ」
言っていて気付いた。
巽さんに言ってない…よね?
僕が神になっているって。
「あー…巽は、今回外す、か?」
「それは本人が拗ねるどころの話じゃないですよね?」
「話は聞かせてもらった分からんけど!!」
バンッと会議室の扉が開き、香也が入ってきた。
「あ、尋定さん」
「いやマジでそのネタ引っ張らないで!?でも昔の符合が役に立ったでしょ!?」
「昔って程でもないけど…うーん?」
「そこはせめてうんって言って!」
いや、そんな事言われてもなぁ…役立ったと言われるとかなり微妙だし。
「兎も角!仲間外れイクナイ!俺も含めて!」
「いや、尋定さんはまだ無理だなぁ…最低でもマンション神域で伊邪那美お母さんからの圧を受けても大丈夫なレベルが必要だし」
「───うん。それ無理」
ちょっと葛藤したものの、香也は諦めてくれた。
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