787話 農業は筋肉でするものではありません(切実)


 農業舐めるなと言うことでガアラスタさんは明日から暫く我等が日本の農業神お二方と共に農業体験を行うことになったらしい。

 いやぁ…不安しかねぇッスわ~。

 あの方々、最初こそは権能や神力を駆使して農作物を育てていたのに今や…半分は自力なんですよ?

 しかもガチムチに鍛えて…綺麗で筋肉質なお姉さん。複数の米俵を両肩に担いで歩き回るレベル。

 あんな儚げだった大宜都比売様が、お嬢様みたいな感じだった宇迦之御魂様が…腹筋割れて格好良くなっているなんて誰が想像するのさ…

 合う度に「私の腹筋、更に割れているわよ?」とか言って触らせてくれる。

 ………良いなぁ、筋肉。


 僕が筋肉質になった姿を兄さんが見て絶句していた。

 佑那は発狂し、そう仕向けた香也をモザイクが掛かるくらい殴っていたなぁ…

 やがて兄さんは悟ったような顔で僕の肩を叩く。

「夢の中とはいえ、どうがんばってもお前にそんな無茶な筋肉はつかないぞ」

 その言葉に目が覚めた。

 そっかぁ、僕、あんなムキムキマッチョにはならないのかぁ…

 ため息を吐きながら体を起こし、朝食を作るため台所へと向かった。

 無難にご飯と豚肉のケチャップソテーとサラダ、オニオンスープで良いかな。

 但しご飯は通常よりも少し多めで。

 生姜焼きもそうだけど、ケチャップのソテーもご飯とよくあう。そりゃあもうガッツリいくでしょ。

 普段より5人分ほど多めに作り、ストックとして保管しておく。

 神様方へ持っていったあと、箱庭で食事を取る。

「うわぁ…わぁ!」

 廣瀬お姉さん大歓喜。

 廣瀬お姉さんって嫌いなものはないけどなにげに子ども舌なので好きな物は分かりやすい。

 だからこそご飯少し多めに盛っておく。

 因みにこれ、佑那の好物でもある。

「朝から豪勢だ!夕飯はナポリタンかハンバーグ!?」

 それは全てお前の希望だろうが…と思っていたら、もの凄く期待の籠もった目で見てくる方々が…

「佑那、作るには足りない物があるから買ってきて。あとでリスト渡すから」

「了解!業務用?」

「ある程度買いだめしないといけないから…そうだね。序でに注文もしておいて」

「やることが業者だよ…」

「本当なら1日何万円分の食費が掛かっていると?材料費ほぼゼロだから助かっているけど、大変だからね?」

 ほぼであってゼロではない。ただ、市販品は各国大使館の方々が差し入れしてくるというね…食料庫に色々入っていてビックリした。

 偶にお返しにとそれらを使って1階のお客さん宛にサービス1品送り込んでいるけど。キムチ炒飯とか、鶏肉と野菜のパエリアとか、アメリカンピザとクラムチャウダーとか。まあ、色々。

 食事も終わり片付けも佑那へのお使いメモを渡すのも終わったので出勤する───あ。

「フィラさん、ゲートは無事?」

「ええ。私の方で引き継いでいるから」

 すっかり忘れていた。ゲートは基本タイムさんに任せていたからなぁ…

「そろそろ自分でもやってみたら?空間操作できるんだからできるはずよ?」

 フィラさんに言われ後で練習しようかなと思いながらゲートを潜る…前に咄嗟に後ろへと跳んだ。

「フィラさん」

「…ええ。ゲート間、何か別のモノが挟まっているようね」

 フィラさんもそれに気付いたらしく険しい顔で開いたゲートを見、そして消した。


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