788話 懐かしい姿に変身っ!
恐らく出口側手前の位相空間に相手側の何かが貼り付いているのだろうとフィラさんは嫌そうに言った。
「じゃあ、普通に出勤しよっか」
「えっ?いいの?」
「多分相手はそれを狙っているって事でしょ?だから変装しようかなぁって」
「あわ、あわわわわわ……」
フィラさんが顔を真っ赤にして僕にしがみついている。
いや、俺と言うべきか?まあ、どっちでも良いけど。
「大丈夫?」
「その顔で、その優しい声出されると、色々バグるぅぅ」
あ、こりゃ駄目だ。
お久しぶりです。執事モードですよ。
ガワは兄さんに似せてあるので目元がちょっときつめな感じですが…うん。兄さんだ。あと良い感じの筋肉が羨ましい。
「さて、フィラさん行きましょうか」
「待って待って!応援呼んでくるから!」
「かーたま!とーたまのすがたまねてる!」
まさかの白獅子ちーくんだった…
「うん。僕を狙っている悪い人がいるみたいだから変装しているんだよ」
「おー…へんそう!」
ちーくんはお目々をキラキラさせて僕を見ている。
「フィラさんと一緒に僕の影の中に隠れて、襲われそうになったら助けてくれる?」
「うんっ!」
「ショタと一つ影の中…」
「色々ダダ漏れですよ…」
フィラさんも僕の影の中に入り準備は万端。さあ、出勤しようか。
兄さんは眼力と近寄るなオーラで人を寄せ付けなかったから普通に生活出来たんだな…僕にそんな技量が無いから…前と同じ状況だよこれ…
女性がワラワラと後ろから付いてくるし、偶に先回りして動画撮ったりするし…無法地帯だな!?
ただ、これだけ人がいるせいか相手方が何か仕掛けてくることもなく協会本部に着いた。
ただ、ちょっとおかしい。
師団の人達がいない?
僕は少し急いで建物の中へと入った。
相変わらず不思議認証は変装した僕を普通に岩崎友紀として認証するなぁ…
職員通用口から入ると中が騒がしい。
ああ、会議室だと分かった瞬間僕は走り出す。
「失礼!」
人をかき分け会議室に入ると、ゲートから黒い触手のようなものが出ており、それを師団の人達が結界で防いでいた。
「くろおびだ!ぼくがたおすの!」
ちーくんがそう言いながら影から飛びだし、一瞬で黒い触手を斬り裂いた挙げ句聖光をまき散らして浄化した。
ゲートは大きく歪み、やがて消滅してしまった。
「ちーくんえらいえらい…フィラさん、確認と開通を」
「はいはーい、うん。大丈夫みたいだから開通と補強をしておくわね」
ふう、これで問題解決だ。
一息吐き、入口の方を見ると、野次馬達が硬直していた。
あっ、マズい…この姿だと部外者で───
「兄者だーーーーーッ!!」
誰かがそう叫び、全員が何故か歓喜の雄叫びを上げた。
いや、えっ?何事?
課長と巽さんが素早く全員を蹴散らして会議室の扉を閉めた。
「まったく…岩崎。変装をしてどうした」
「姫様…姿は似せられてもその目はいつもの姫様ですよ」
まさか即看破されるとは思わなかったけど…うん。
「ゲートがおかしかったので徒歩で通勤したのですが、元の姿だと問題が起きそうでしたのでこの姿で来ました」
「……電話していただければいつものように車で送迎しましたが…」
ごめんなさい。ちょっと歩きたかったんです。あと、相手の出方確認を…なんて言えるわけもなく苦笑して誤魔化した。
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