789話 兄さんは女友達しかいない(風評被害)


 会議室から出ると見事に女性しかいなかった。

 そして黄色い悲鳴が上がる。

「女性陣。こっちは変装した岩崎弟…うちの職員の方だぞ」

 課長がそう諫めるも女性職員達はキャーキャー言ってばかり。

「───少し、冷静になれ」

 課長、そのレベルの殺気は人がショックで気を失ったり…色々漏らす可能性も…


 大惨事にはならなかったけど、全員が脱兎の如く逃げ出した。

 うちの職場の女性陣って、みんな強いなぁ…

「まったく、自由すぎるぞ」

 ため息を吐く課長。

 巽さんも苦笑ではなく苦い顔だ。

 まあ、危機感なさ過ぎと言えばそれまでだけど…うん。

「おーい特務課は全員会議室に集合。昨日の監査の件で話がある」

 課長が大きな声でそう言うと全員が一斉に会議室にやってくる。

 当然僕も再び会議室に戻るわけで…

「これから昨日の件でいくつか伝えなければならないことがある」

 どうやら昨日、上の方針が決定したのでその説明らしい。

「まず、中央本部のトップが暴走した件と日本協会本部が蔑ろにされていた件を上が重く受け止め、協会脱退を宣言。関係解消となった。

 同時にアソシエーションではなくソサエティーとなる。協会という形は同じだが数年前から非営利へとシフトチェンジしていたわけだから今回完全にそうなる」

 課長の台詞にざわめく。

 実際問題非営利団体ではないが予算の半数以上を国などからの補助金等でまかなわれているものの、各企業からの協力金もかなりの額ありそれらでなんとか運営出来ていると言っても過言ではない。

 実際問題企業が欲しいのは情報であり、繋がりである。こちらが集めた情報や探索者情報等を企業に提供し、企業はそれらを元に利益を出す。

 探索部で言えば…


 運営課が探索者・ギルド・クラン情報を。

 管理課がアイテム情報・モンスター情報・ダンジョン情報の解析と管理を。

 広報課が、上記2つの課が有する情報を探索者及び協力企業へ提供する。

 ただ、事業部が本来広報課が行っていたそれらの業務を企業、一般向けは全部事業部へ移した結果、今の広報課は国や中央本部等への情報提供部署になってしまったわけだけど…

 やったのは老害長で下手にこちらがお金を稼ごうとした結果があのザマというね…そもそもそれは違反行為だったりするけど。

 事業部は本来権利関係や中央本部等との資金提供のやりとりをしていた部署だったらしいんだけど…うん。僕その頃の話知らないから聞いてびっくりした。

 あと、同じ探索部内のうちの課…特務課に関しては実働部隊だが利益はない。

 うちの課だけは基本補助金だよりという状態だ。

 ただ一点。実働部隊だけに何かあったときに防衛含めあらゆる事を行っているわけだけど…

 医療班や医療強行班は正直うちで働くよりもダンジョン探索関連企業に行った方が何倍もお給料をもらえる。

 お荷物扱いされるのに給料がそんなに高くない…これは辛いよね。

「そして今回この内部改変に基づいて国内全ての探索部特務課は一度解体され──」

 えっ!?

「新たに組織される2カ国共同組織ダンジョン鎮守府に編入。そこからここに出向という形となる」

 ふぁっ!?

「喜べお前達…給料増えるぞ?そして、最新技術提供もあるらしいぞ?」

 えっ?じゃあ、僕たち…公務員になるの?

「因みに長谷川部長は明日付で探索部部長を退任。鎮守府軍監となる」

 もう、何が何だか………待てよ?

「フィラさん。ゆる姉様かせお姉様にこの鎮守府について聞いて来て貰っても?」

 小声でフィラさんにお願いする。

 これ多分言い忘れてないかなぁ…僕に。

 2カ国って絶対日本と神国だろうし。

 マンションの1フロアを鎮守府にしようとか絶対考えていると思うんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る