867話 お休みだから練習するかな①
「ぐるぐるぐる…にゃー!ぐるぐるぐる…にゃー!」
『ぐるぐるぐる…ワン!ぐるぐるぐる…ワン!』
『ぐるぐるぐる…ぴょん!ぐるぐるぐる…ぴょん!』
右へ左へ体をかがめながら両手を胸の前で小さく回してそれぞれのポーズをする。
僕はあの際どい着ぐるみモードで、マイヤはタレ犬耳、リムネーはバニーさんだ。
現在1曲目の振り付けを練習中。
なんか少し音頭っぽい感じの歌だけど、これを選曲した佑那と紅葉さんはきっと馬鹿なんじゃないかなと思う。
「可愛いとノリの良さ、そして和テイストと言えば『あにまるDE音頭』スタートが最適でしょ!」
「半分は同意!振り付けがエロ可愛いから3人でするのにちょうど良いし!男の娘、幼女、美女…最強ね!」
…思い出したら殺意わくから忘れよう。
2人は僕と歌って踊れるって喜んでるし。
…喜んで良いのかなぁ?それ。大観衆の前でやるんだよ?
「そして私がシークレットの狐さんですよ~」
まさかの廣瀬お姉さんも参加するというね…しかも1曲目から。
ただ、これには理由があったりするが、まあ最悪の想定を覆すための策だという事だけ。
僕、今日中に最低5曲の歌詞と振り付け覚えないといけないんだけど…午後には部長から協会枠の選曲決定連絡が来るだろうし。
それまで少しでも歌って踊れるよう頑張ろう。
被ってた。
協会選曲が全部被ってた。
すぐに曲かぶりなのでそれ以外でとメッセージを送り、個人レッスンを行う。
2曲目はかなり激しい曲で、動き回りながら歌うという結構大変なものだ。
3曲目はしっとり系…だけど、一番大変。ダンス自体はほぼ無いけど語りかけるような歌い方とロングブレスがキツい。
ああ、昔スタジオでやった事を思い出す。
4曲目、全てへ感謝の歌。
5曲目は精根尽き果てて絶望している人への歌。
一通り歌ってみて気付く。
「───佑那、何しているのかな?」
カメラと特殊なマイクを持って僕を撮影している佑那に問う。
「歌のシーンつなぎ合わせてCMとして使おうかなぁって」
何のCMだ。何の。
「それ、普通本人の承諾を得ないかなぁ?」
「作った後に承諾得ようかなって」
「その前にうっかりアップロードするんでしょ」
えっ?と言う顔の後、
「その考えは、なかった…」
うっそだろ。絶対この子そのつもりだったよ!
「編集してきまーす!」
「あっ!何のCMに使う気なのかを…」
なんであんなに早いのさ…カメラを小脇に抱えて全力疾走してるし。
出来上がって僕に確認に来た時に聞こう。
トンデモな内容だったら問答無用でデータを消す。
やられた。
「だって兄さんが前もって言うからやれっていう前振りかと思って!」
編集した動画を即座にアップしやがりましたよこの子。
「……で、CMとか言ってたのは、何?」
「兄さんのコンサートライブのCM第1弾」
「その言い方だと第2第3ありそうなんだけど!?」
「だって曲を事前に教えておかないと皆で歌ったり、心の準備だったりできないでしょ?」
心の準備って、何?
後で確認したら、アップして僅か1時間で40万再生とか訳が分からない数字になっていた。
他にする事あると思うんだ。他にする事あると思うんだ!
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