5話 TS化した僕は服の高性能さに悪意を感じる

 みんなからジロジロ見られながらの食事を終えてデスクに戻ると、同じ班の女性三人が真剣な表情で話し合いをしていました。

「本気?」

「岩ちゃんのスタイルでそれは反則というか、禁じ手じゃね?」

「だよねぇ」

[あの、何の話ですか?僕の事みたいですけど]

「ユーキちゃんのその服の件で話し合っていたのよ」

[この服、ですか?]

「そそ。防御機構なら幾つかのモードチェンジがあるでしょ?それがなにかなって」

「今分かっているのがクラシカルメイドスタイルとその私服スタイルだけだから他は何かな?って話をしてたのよ」

「で、巫女とかシスター系って案も出たけど、そのスタイルで聖職者って……薄い本が厚くなるわ!って」

[えっと…]

「えっ?その反応はまさか…」

[あります。修道服と巫女服]

「「「あるんかい!」」」

[この服については特に世界の悪意を感じましたよ]

 項垂れる僕とは対照的に三名のテンションは上がっていた。

「見たい!その性能もそうだけど似合うかが見たい!」

[性能?]

 首をかしげた僕に三人も首をかしげた。

「えっ?待って?もしかして防御機構の事知らない?」

[はい。巽さんからは着る要塞と呼ばれている事と、自動迎撃機能がある事、幾つかの形態がある事を教えてもらいました]

「あー…まあ、基本的な事は説明しているのね」

「実際確認した方が早いと思うけど?」

[確認ですか?]

「今のモードに何かスキルが付いているはずよ?」

[えっ!?───クリーンと最適温湿度調節というのがありますけど、コレですか?]

「たぶんそれね。まあまあ普通…じゃねぇわ。は?最適温湿度調節!?」

「私服モードでそれってどうなのよ。じゃあ修道服は!?」

[あの、僕男だったのでメイド服とか含めてそういった服はちょっと…]

「性能確認よ?いきなりみんなの前で変わらなきゃいけない!なんて事があったら困るでしょ?確認は大事よ?」

「岩ちゃん。男は度胸よ!」

「まだその言葉使う人居たんだ…」

「あ?」

[…分かりました。修道服に変えます]

 意識を服へと向け、修道女へと切り替える。

 ───うん。ちょっと違う気がするけど、修道服だ。

「エッロ!素肌ほぼ見えないのにスタイル強調が凄すぎてエッロ!!」

「うわぁ…うわぁ…!」

「そんなスタイルのいい聖女がいるか!!」

 いや僕、聖女から慈母になりましたし。何故か。何故か!(大事な事なので2度言いました)

[それで、このモードの時は…クリーンと最適温湿度調節、告解室設置?]

「は!?」

「前代未聞ね…モードスキルに物質オプションなんて、それこそ移動要塞と言われた軍神の鎧に比類するわよ」

「告解室使ってみて使ってみて!」

[えっと、ここだとスペースがないそうです]

「じゃあちょっと共有スペースに行こうよ」

[いや、あの、三人ともお仕事を…]

「大丈夫!急ぎならアナウンス流れるし!」

 それ怒られるヤツだから…



 共有スペースに出ると途端に色んな人の視線が集中するのが分かる。

 またここはカウンターから見えるので探索者の方々からも視線を受けている。

「ここなら問題無いでしょ」

[問題大ありです…注目浴びすぎですよ…]

「美人でエロすぎるシスターが悪い」

「同意」

「激しく同意」

[やだこの人達、私怨が混じってるぅ…]

「さあさあ!やっておしまいなさい!」

[分かりましたよ…]

「───焦心苦慮せし迷い子達の心の一助とならん事を…告解室展開」

 告解室展開のためのキーワードを告げると空間がゆがみ、そこにはこぢんまりとした告解室が出来上がっていた。

「懺悔部屋だねぇ」

「だいたい2~3畳くらいか。しかししっかりとしてるな」

「ユーキちゃんやってみよう!」

 僕はしかたなく聖職者入口より中へと入る。

『所有者が告解室に入室しました。慈母の眼とリンクいたします』

 えっ!?

 突然のアナウンスに僕の思考は一瞬フリーズしたが、対面側の扉がノックされたために我に返った。

「どうぞお入りください」

 お試しに展開した告解室の初めての利用者だ。

 歓迎しよう。盛大にな!


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