6話 TS化した僕に妹?ができる?

「失礼しまぁす……」

 入ってきたのはどうやらあの三人以外の人のようだった。

「どうぞそちらにおかけください」

 うむ。完全によそ行きモードの声が出る。

 普段からこれくらいの声量が出ればなぁと思いつつ…うわっ!?

 入室した人が椅子に座ったような気配がしたと同時に僕の目の前に

 ウインドウが現れた。

【有間紗凪:19歳 罪科:無し 状態:疲労(大)・寝不足・精神不安(大)

 備考1:父親が失踪し、家族を支えるためアルバイトを掛け持ちでしている

 備考2:7ヶ月前に友人?からもらった呪物に運気を吸い上げられている】

 ───なにこれぇ。

 いや、マジで何コレ。

 慈母の眼って鑑定・観察眼ってあったのに、めっちゃ踏み込んだ個人情報まで出てきてますやん!

 コレ他所様に絶対言えない類の事がバンバン出るって事だよね!?言わないけどね!言えないけどね!

 さてどうしよう……どう切り出すかなぁ。

「お疲れのようですね」

 誰の声だ!?僕の声だ!

 何この強制イベント!僕の声はマズイですって!

 普通に声を出したら…抑えなかったら!

「!?」

「この部屋の事は外には一切漏れる事はありません。こちらから貴女の事は見えません。悩み事、困りごと、愚痴、何でも仰ってください」

 けれども僕の声は台本を読み上げるように流れ出る。

 ───人の魂に、事象に、ただ告解せよと優しく伝えている。確かに正しい使い方かも知れないですけど…ですけど!

 僅かに動揺する気配を感じた。

 疲労と精神不安が酷いから慈母の癒しを起動させておこう。

「───目を閉じて、ゆっくり深呼吸をして…そう。外には絶対に聞こえないから、もう一度ゆっくりと息を吸って…不安を吐き出すように叫びなさい」

「っ!ぁ、あああああああああああああっっっ!」

 絶叫が上がった。

「もう限界なんです!わたっ、私!もうっ!」

 癒し系はリラックス効果もあるため、抑えていた感情のタガを外す時は便利なんだよなぁ…

「貴女は頑張っているわ。誰がなんと言おうとも、貴女がよく分かっているでしょ?こんなに体と心が悲鳴を上げるほど頑張れるなんてなかなかできる事じゃないわ」

「でも、でも、私ミスが多くて、使えないって」

「疲れた体と心ではミスが増えるものよ?」

 泣いてますやん。ギャン泣きですやん。

 これ、かなりギリギリの状態だった?ヘタすると自棄になってとんでもない事になってたかも?

「もう一度目を閉じてゆっくり息を吸ってゆっくり吐いて…貴女は頑張りすぎるくらい頑張ったの。少し休憩が必要なのよ。今一時だけ───」

 慈母の癒し重ね掛け!

 告解室内が白銀の光に包まれる。

 聖女時代も緊急時は癒しの波動の重ね掛けを使っていたけど、こっちでもできるなら・・・むっ?

【有間紗凪:19歳 罪科:無し 状態:疲労(微)・寝不足

 備考1:父親が失踪し、家族を支えるためアルバイトを掛け持ちでしている

 備考2:呪物は解呪されました。/呪術返し発動のため運気逆流中】

 なんか呪い返しが発動してる!?体力回復と解呪が効果のハズなのに!

 ───事実を話すしかないかなぁ…でも、もう少し休んでもらってからにしよう。



「すみません寝てましたっ!?」

 体感で10分ほど経った頃彼女に声を掛けると、もの凄く慌てた感じで飛び起きた。

「大丈夫ですよ。10分ほどですから」

 5分1秒のアニソンを脳内で2回流して声かけましたから。

「結構経って「それよりも」…なんでしょうか」

「貴女、呪われていたようですが、心当たりはありますか?」

 僕の台詞に彼女は「ヒッ」と小さく息を吸った。

 どうやら押しつけられた類の代物なんだろうなぁ…

「勝手ながら解呪は終わっていますので問題は無いはずです。もし何かあるのであれば私に相談してください」

「…はい。ありがとう、ございます」

「周辺の運気を無理矢理吸い取る類のものでしたから、もしかすると今日はもの凄く運気が上昇しているかも知れませんよ?宝くじでも買ってみては如何ですか?」

 ちょっと冗談ぽく言うと彼女は「お姉様がそう仰るのでしたら、初めてですが、買ってみます」と返答し───お姉様?

 いや、僕妹は実妹一人でお腹いっぱいですよ?


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