617話 帰還と、顔合わせ
課長と巽さん、そしてあと2人がこちらに来た。
「岩崎、助かった」
「姫様、ありがとうございました」
2人揃って僕に礼を言ってきた。
「いえいえ…大丈夫でしたか?」
「ああ。どうやら数十体の妖怪や悪霊が空港にいたらしい」
───えっ?
「まさかの引き込み役の妖怪が結界内に妖怪を引き入れていたんだ」
結界貫通していたって事!?
「妖怪の中で境界内に入り込むタイプがいるらしいんだが、神域結界ではないタイプ…ただの結界の場合は手順を踏んで中に入ることができるらしい」
「えええ…ああ、吸血鬼とか玄関や窓から入るにしても許可が要るって話があったような気がする」
認識や境界のズレを利用する妖怪などは「招かれた」という事実を使い結界を抜ける…らしい。
「海外では教会のように結界で閉じたあと神聖職の人間が聖光などで定期的に場を浄める事によって中に入られてもそうそう自由にさせないように対策を取る」
苦い顔をしながらそう説明する課長を見て「ああ、それをおざなりにしていたせいで妖怪につけ込まれたんだなぁ…」と理解した。
それ以前に、空港の結界って何で構築されていたのか…それが知りたいと思った。
「ところで…そちらの方々は?」
課長と巽さんの後ろで待機している2人に目を向ける。
「統合情報部の佐々木です」
「特別災害対策共同部局の与古田です」
2人は僕にビシッと敬礼をする。
「特務課の岩崎です」
僕は2人にお辞儀をする。
「巫女様には様々な場面で助けていただき、ありがとうございます」
「巫女様。日々この国を含め世界を救っていただきありがとうございます」
佐々木さんと与古田さんがそう言って深々と頭を下げてきた。
「ぅえ!?え、あ、はい。どういたしまして…」
「コイツは姫信者だぞ」
突然課長が佐々木さんの肩を叩く。
「ちょっ!?」
焦る佐々木さんと、目を見開き裏切られたというような顔の与古田さん。
「姫信者?」
「今だと巫女信者か…まあ、古参のお前さんの信者だな」
「最古参ではありませんが…」
「私ですら古参止まりだ。当たり前だろう」
いや、何の話をしているんですか…
みんなで食堂へ行き、昼食を取る。
「与古田さんは兄さんと面識があるんですか…」
「はい。年1回の修行を部隊ごとに受けていました」
「あー…磯部さんの部隊との合同ですか?」
地獄の訓練とか散々言われていたアレかな?
「そうです。当時私は特殊部隊に所属していたので。まあ、おかげさまで咄嗟の対応能力等はかなり技量が上がりました」
そう言う与古田さんの目はハイライトが消えていた。
「マンションのフィットネスジムに行けばいつでも体験できますよ?」
「…あー、あれか…」
「あれは…特殊部隊の戦闘訓練ですよね…」
課長と巽さんが遠い目をする。
「アレは、キツい…」
「対妖怪のメニューもあるので…現在かなり賑わっていますが」
「興味しか無いのですが?」
「部外者も出来るのでしょうか」
「入居者の紹介があれば1人につき2人までは参加できます」
「「よろしくお願いします!」」
佐々木さんと与古田さんは揃って僕に頭を下げた。
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