592話 言い忘れと、兄さんレポート


 配信を終え、一息吐く。

 あ…言い忘れてた!

 慌てて配信を再開させる。


『えっ!?再開?』

『何か緊急ですか?』

『巫女様どした?』


「言い忘れてました。海にもダンジョンが結構数あって、モンスターや妖怪が放出されているという情報が入りましたのでこれまで以上に海には気を付けてくださいね?」


『それいっちゃん重要な事ぉぉぉっ!!』


 コメント欄が清々しいほど同じ内容の突っ込みで埋め尽くされた。

 ゴメン!本気で忘れてただけなんですぅ!


 ただでさえ海運業関連死にかけていたのに僕の一言が結構な致命傷になった模様。

 現在の世界輸送状況って半数がマジックバッグでの航空便がメインだけど…容量制限やマジックバッグの絶対量がね…

 前に聞いたマジックバッグの容量は広さ10畳くらいで高さ3メートルだったっけ…20フィートコンテナ位ないかな?それ。

 平均どれくらいの容量なんだろう…5倍とか10倍のものあるのかなぁ?

 まあそれはいいとして、志堂菓子店に注文の電話を入れる。

 結構な数量だったので明後日でも構わないといったのに明日でもOKという回答だった。

 無理してない?大丈夫?

 …行く時に神域の食材をお裾分けしよう。

「…姫様…件の学生ですが」

 巽さんが疲れた顔で戻って来た。

「どうだったの?」

「同調憑依との事でした」

「最悪3歩手前だったんだ…まあ、精神的な後遺症は出るだろうけど…えっ?なんでそんな微妙な顔を?」

「兄さん…解決法、知っていたんですか?」

「そんなわけ無いじゃないか。ただ、消去法を使っただけだよ」

「と、言いますと?」

 そこまで難しくはないんだけどなぁ…

「まず、性根が妖魔側に近いから結界に阻まれるなんて無い。障気と親和性があっても1~3時間で相応の生命力と相殺されて消滅する。

 そして憑依…これは条件付きで可能性アリだよね。ただの憑依しか出来ないような弱いモノであればあの魔水晶の圧に取り込まれ、消える。

 上位悪霊や下位悪魔がよく行う同調憑依であれば1日2日で体内に潜り込めるけど相性次第。性根が近ければ時間も掛からず、分離することも難しくなる…」

 僕の説明に巽さんと佑那が少し驚いた顔で僕を見る。

「最後に喰われた場合だけど…一番あり得ない。短期間で対象者を喰らって入れ替わる妖怪は居るようだけど…そのレベルの妖怪って人前に出るまでに色々な準備をする。人の恐ろしさを熟知しているから…そしてそんな簡単に馬脚を現さない。

 巽さんも見たでしょ?あの件がなければ本当に大変な事になっていた」

 崎口さんの件。アレは本当に危険なものだったと思う。

「因みに佑那がやらかした大陸浄化事件なんだけど」

「そんな物騒な事件を起こした覚えないですよ!?」

「流石隊長です!」

「待って!?本当に待って!?」

 わあ、ジャンヌさんの目がキラッキラしてるぅ…

「あの際に今言った乗っ取り、皮被り含め数万人のが発見されたたしいよ?」

「!?」

 そう。死体ですら無い状態。皮だけ、もしくは変質したナニカだったらしい。

「あの、その情報は?」

「兄さんからレポートをもらったんだ」

 巽さんが険しい表情で考え込む。

「少なくとも僕が襲われて以降四重の障壁と憑依・入れ替わり対策は出来ているらしいからこのマンションに出入りできる時点で問題無いよ」

「関係者をこのマンションに住まわせたりする意味は十分にあるわけですね」

「今はまだ、ね」

「姫様、本当にここから撤退するおつもりですか?」

「準備だけは進めているよ?また突っ込まれたら即出るって神様方も言ってるし、拠点自体はあちらになるわけだからね」

 まあ、僕はここか実家だけであってあちらをメインにはする予定はありませんが!



 ───── 業務連絡 ─────



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