593話 見なければならない物と、見なければ良かった物
巽さんが兄さんレポートを見たいと言ってきたので僕の中で見せても多分問題無い範囲の物を数冊用意して…
「巽さん巽さん。これ、多分課長と部長も見た方がいいものだと思うんですよ」
「えっ?」
「重要なことも書かれているので」
「…そう、ですね。では協会で閲覧という事で」
というわけで協会へ転移し、会議室でお三方へ開帳することにした。
「これは……国家機密レベルの危険物なのだが…」
「ここ数年間の対妖怪の事例と妖怪の対処法がこんなに…」
「内見の儀!?水鏡見鬼法!?そんなモノ知りませんよ!?これがスキルではなく個人技能で!?」
三人が三人とも顔面蒼白なんですけど…えっと?
「岩崎…頼む、これを貸してくれ…」
課長が頭を下げてきた。
「貸すと言うよりも…コピーしたらどうですか?」
「「「えっ!?」」」
兄さんの物なのであげませんけど、別にコピーは良いと思うんですけどねぇ?
もしかして原本絶対主義!?
「助かるっ!すぐにコピーしてくる!」
「5部!違う8部コピーお願いッ!」
「課長!私が!」
課長と巽さんが半分くらい持って行ってしまった。
「ねえ、これは本当に重要なものなの。本当に、簡単に見せても良かったの?」
部長がそう聞いてくるけど、僕は首をかしげる。
「これくらいであれば見せても問題無いと思いますので」
「えっ?これくらい?」
「はい。ファイルの途中、ナンバリングが抜けていますよね?」
僕に言われて気付いたらしく、部長は「あ」と小さな声を上げた。
「これは…?」
「例えばナンバー4には冥界への行き方や京都方面で出会した妖怪だけだったら良いんですが、朝廷の暗部や恥部まで細々と書かれているので流石に持ち出すのはマズイと思いまして」
「………」
「あ!現代のではないですよ!?奈良から平安に掛けてですからね!?あ、でも…いえ、何でも無いです」
「えっ!?凄く気になるんですけど!?」
部長ゴメンナサイ…流石にこれを言ったら戦犯が誰か分かってしまうんですっ!
全部のコピーが終わったのは4時前だった。
僕は箱庭へ戻り、お夕飯の準備をする。
豚肉とモヤシの甘辛酢づけと、カボチャの煮物。きんぴらゴボウ、ジャガイモと人参のお味噌汁で十分かなぁ?
いつも通りご飯は大量に炊くけど…時間的にカボチャが大変そうだぁ…1個で15~6人分だから5個は使おうかな…1個は箱庭の人達分という事で。
巫女様スキル乱用調理中
「…モヤシのヒゲ取りの方が難敵だった件について」
いやまあ、量がね?キロ単位ですし?
考えてみたらカボチャはわた取りと切るのが少し手間という以外はアク取りと火加減の調節位だしなぁ…半ば放置でもいいし。
なーんかもう一品…デザート?
芝麻球…胡麻団子とかでも良いかなぁ…餡を作るのが大変だけど!よし、気合い入れて5~60個位作るか!
『パパがお菓子を作る予感がしたの!』
『お菓子の気配を感じました!』
アラやだこの子達…お菓子を作る時だけ手伝いに来るなんて…もう少し増やした方が良いのかなぁ…
「じゃあ二人にもちょっと手伝ってもらおうかなぁ?」
『『はいっ!』』
うん。良いお返事。みんなで作れば少しは早くできると信じて!
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