143話 来客~二国大使、襲来

 エントランスには二人のピシッとした男性とその周囲に各三人の警護らしき男性が少し離れて立っている。

 細マッチョさんとマッチョさんだ…

「姫様?」

[ああ、失礼]

「此方はカナダ大使とスペイン大使で…」

[失礼。カナダ大使は悪魔召喚の件は終了したと思っていましたが…]

「「「えっ!?」」」

 巽さんと両国大使が同時に声を上げた。

[カナダの悪魔は天からの聖光に焼かれて消滅したと聞いたのですが…]

「どっ、どこからそれを!?確か我が部隊はほぼ壊滅状態で…」

[はい。兄がカナダ付近なら対処出来るとのことでしたので対処してもらいました。

 恐らく付近で光りの柱が降りてきたと騒ぎが起きているかと思いますので…]

 僕の台詞を聞くや後ろの護衛の一人が電話で確認を取り始めた。

[…ですのでカナダ大使はもう問題は無いかと思われます]

「……あの、その兄というのは」

[実の兄で、現在神の要請で(異世界を)跳びまわっているます]

 ───嘘は吐いてないよ!?

「大使。確認が取れました」

「それで?」

「天からの光線が悪魔を刺し貫いたと」

「おお…おおっ!」

 感極まって涙目のカナダ大使とは対照的に暗い表情のスペイン大使。

 申し訳ありませんが、兄は動けて1体とのことでしたので…

「…いえ、仕方のないことだというのは分かっています。現在現地の軍と神聖職者達が必死で悪魔を隔離しているのです」

 かなり顔色が悪い。

[ご家族、ご親戚がその中に?]

「…お恥ずかしながら、妹が…優秀な聖騎士でして…」

 確かに、悪魔退治には有効…とは言いがたいんだよなぁ…仕方ない。ちょっと確認しよう。

[少々お待ちください]

 素早く修道服に着替え、告解室を出す。

 巽さん以外の人間は慌てた様子だが、僕は構わず扉を開く。

[ああ、照会のためですが、妹さんの名前は?]

「そ、ソフィアだ」

[ありがとうございます。少し確認してみます]

 そう言って告解室の中に入った。


『神のいつくしみに信頼して、以下略。愛し子よ、どうかしましたか?』

[のっけからはっちゃけすぎではないですかね!?]

『また上位世界の神から助走付けてのドロップキックを食らいたくはないのでね』

[何か済みません…]

『話は聞かせてもらった。君の兄は何処に向かっているのかね!?』

[そっちからですかー…僕にも分かりません!兄さんがおかしいのはいつもの事です!]

『君も大概だと気付いて!?お願いだから!』

[よもや僕が駄目出しされるとは…って、そうではなく!]

『現在悪魔と戦っている部隊の中でマトモに戦える者は居ない。聖騎士ソフィアは確かに中層上部のモンスターやその階層に出るようなデーモンを倒すことは出来るだろうが…』

[無理、ですか…では、これを使った場合はどうでしょうか]

 僕はプライベートボックスよりロザリオを取り出した。

『───君、ホンマええ加減にせぇよ?』

[ちょ!?なんか方言混ざってません!?]

『言いたくもなるわ!何このチートアイテム!時限製であってもこんな物がポンポン出てきたら……』

[…あるんです。沢山…]

『ホンマええ加減にせぇよ!?うちらの威信揺らぐで!?』

[言葉言葉!]

『ンッ!…確かにこれがあれば悪魔から身を守れるかも知れないが、攻撃手段がな…』

[ではそのロザリオに攻撃用のお力を加えていただいておいしいとこ取りというのは如何でしょうか?]

『はっはっはっ、そんな事は…あー…それしか救う手はないかぁ…いやぁ、困ったな。ではロザリオを幾つか出してもらおうかな』

 僕はロザリオを5個取り出し、あわせて6個を小窓の前にある台に置く。

『光あれ』

 その言葉とともに6つのロザリオが光を放つ。

『この程度で良いでしょう』

[ありがとうございます。此方、ささやかながら…]

 僕はロザリオをプライベートボックスにしまい、代わりに山梨産の赤ワインを台に置いた。

『思いのこもった良いものですね。ではありがたく…』

 ワインが消えた。

[ありがとうございました。ではロザリオは速やかにお届け致します]

『ええ。頼みましたよ』

 僕は静かに一礼し、告解室を出た。


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