938話 各地の様子(食堂でのやりとり)
SIDE:マンション神域
『コンサート成功にカンパイ!』
1階食堂は人でごった返していた。
次々と注文が入り、即座に給仕がテーブルへと運ぶ。
「巫女様直伝酒粕オムライスうっま!なにこれ!?」
「食材もそうだが、技量も凄い…神々の食卓なんて言いたくなるのも分かる」
ワイワイガヤガヤと賑やかに百名以上の外国人が食事を堪能していた。
「貴方達…だから本国への帰国命令断固拒否したのね」
「うちもそうですよ。確かに胃袋を掴まれたらそうなるのも分かる」
「神々と親しくしている以上貴方達を帰国させるのは得策ではないのは分かっているけれど…狡いわね」
「狡いですよね…こんな旨いモノがあり得ないほど安価で…次の休暇は家族とここにお忍び旅行というのも…」
「うちは子どもが居ないから旦那と全メニュー制覇を狙うのも…」
2カ国の大使館職員及び家族のパーティーを予定していたにもかかわらず、2カ国の外相に捕まり仕方なく連れてきた結果がこれであった。
「「いやぁ…お褒め頂きありがとうございます」」
「「褒めてないが?」」
言い合いながらも酒と食事を飲み食いする手は止まらない。
「…本当に、この国は異常ですよ。昔は食料受給率が低かったのに今では神々の支援がなくても60%近くはある。国の公表は48%と乖離もありますが…
しかもそれはここ10年で成されている…にもかかわらず政治は選択を間違えたりを続けて最近漸くまともになった…この異常について調べはついていますか?」
「ええ。それも全部巫女様のお兄様とその関係者、関係組織が成した結果です」
「……この国を裏から守っていると。まさか麦まで自給率を上げられるなんてね」
女性外相がため息を吐く。そして周りを見回す。
「知っていますか?現在バルセロナでのバゲットの価格を」
「ひと昔前は1ユーロにも満たなかったですが…2ユーロくらいですか?一昨年はそれくらいでしたが…」
大使の台詞に女性外相は首を横に振った。
「4ユーロよ。数ヶ月前までは3ユーロだったし、一時は6ユーロまで跳ね上がっていたのよ」
「それは……」
「うちは食パンは…2ドル後半ですかね?」
「ん?現在5ドルするぞ」
「………何故!?」
「スタンピードでやられたからなぁ…あとはお隣さんへ緊急支援だ。国民には軍事物資との交換と言って宥めはしたが…神々の援助がなければ暴動ものだったよ」
ハハッと肩をすくめて笑う男性外相に同国大使が反笑いする。
「益々母国へ帰りたくなくなりますな…」
深いため息を吐く一同。
他のテーブルでは楽しそうにしているだけに、温度差が酷い。
「あらあら。どうかなさいましたか?」
「ウェスタ様。実は───」
大使はやってきた女神ウェスタ様に普通に相談を行う。
が、両国外相はそれどころではなかった。
「ウェスタ神!?あのローマの!?」
「目にした瞬間に神だと意識させられる…恐らく人のレベルまで力を落としているのでしょうね…」
愕然とする外相達を尻目に2カ国大使が話し合いをした結果、
「神阿多都比売ちゃんに伝えておきますのでそこの売店で必要な農作物類を伝えてくれればそれぞれ1人4トンまでなら外交特権として買っていっても構いませんよ?」
『…えっ?』
その場に居た全員がウェスタの方を向く。
「審議の石板に載せていないものを購入してプライベートボックスに入れてしまえば…問題なしですよね?」
微笑むウェスタに外相2人は涙を流した。
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