1062話 佑那の強さ


 部長室を出て自ブースへと向かう。

 巽さんが高速タイピングしてるんですが…ああ、翻訳しているのか。

 翻訳ソフト使ってもニュアンス含めちょっと片手落ちな感じになるし。

 原文読んだ方が良いのは確かだ。

 偶に学者や軍人が遊び心で暗号紛れ込ませているし。

「おはようございます姫様。合衆国の件確認いたしました」

「ん?僕報告貰ったよ?」

「はい。一応護衛として回した者達がああなってしまったということで私の方にも連絡が入りまして…」

 ああ、一応護衛だしね。

「恐らくどのメンバーであっても抗えないと思うんだけどね…」

「と、言いますと?」

 今回の件と神様の件を伝えた。

 ブースに居た全員が挙動不審になった。何故!?


「欲には尊さです!」

 突然巽さんが大声を出した。

「巽さん?頭打った?」

「辛辣!?」

 いやそれはそうでしょ。

 いきなり何を言い出すかと思ったらそんな馬鹿なことを言い出すんだもん。

 何か変なものを食べたか頭打って乱心かとしか…ここは結界の中だし、回復もさせたって言ってたし。

 数人って…もしかしてうちの部署の人達だった?

「でもいっちゃん、あながち間違いでも無いのよ?」

「いえ、間違いですが?」

「えっ?どういう事?」

「相手はあらゆる意味で欲を自由に操れるのですよ?聖人や仙人ですらその一瞬の隙で堕ちるほどの」

「……いっちゃんは?」

「手を出さないようにと電話がありましたけど、佑那を狙撃したりしたので喧嘩を売られたと判断しますよ」

「…姫様が怒ってらっしゃる!」

「姫のお怒りじゃ!者共、出合えー、出合えーっっ!」

 皆何暴走してるの!?

「うちの次男坊を怒らせたのは誰だ!?」

 コック長!?…香椎のおじさん、暇なのかな?

「香椎のお爺ちゃんに言いつけるのも…」

「いやそれは本当に勘弁してくれ!なんか最近若返ったような気がして怖いんだ!」

 若返り…ああ、マイヤと一緒に行って若水飲んで貰おうかな?



 わちゃわちゃ騒がしい中仕事をし、お昼になったのでお仕事を終わらせ、箱庭へと戻る。

「アレ?佑那?」

「佑那さんは一度実家に戻るそうですよー」

 ジャンヌさんがエプロン姿で出迎えながら教えてくれた。

 …いや、貴女のお家はお隣ですよ?って、

「今危険な状態って分かってるのかな!?」

「えっ?欲云々であれば問題ありませんよ?隊長は元々煩悩まみれですが、外部からの操作は効きませんし。何より真面目にしているならやはり岩崎家というレベルですから」

 何その怖い言われ方!

「やはり岩崎家って…」

「この数日でだいぶ強くなりましたからね?真面目にやれば普通に神人程度なら斬り捨てますよ?」

 ジャンヌさんが何を言っているのか一瞬分からなかった。

「……えっ?」

「馬鹿やらなかったら課長さんと巽さん2人を相手に普通に勝ちますからね?相手武器あり本気でも制圧出来ます」

「…どんだけ化け物になってるの?いやでも今戦っている神様には…」

「勝てずとも撤退戦や援護を要請しての耐久戦ならできますよ」

 佑那…もうちょっと常日頃真面目になって!?


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