1004話 頭を抱える人達と神の一声
SIDE:首相官邸
配信の終了と共に集まっていた3人は頭を抱えた。
「またこのパターンか…!」
「マジで馬鹿が…馬鹿が多すぎる…っ!」
「馬鹿が定期的に湧きすぎじゃないか!?何が言論弾圧だ!恩人に唾吐く馬鹿が何処にいるという話だぞ!?」
会議室でテーブルに突っ伏す磯部総理と磯部大臣。そして机をバンバン叩く浅野副総理がいた。
「全世界規模は辛いぞ…これは」
「ネット社会の弊害だろうな。小さなコミュニティでお山の大将やっていた馬鹿が仲間を使っておらが村の当たり前を広めているんだろう。
自身の発言に責任がないと信じているアンチ連中は何処にでもいるし、他の人間が言っているのだからと考える頭のない日和見連中が一緒に叩いて…結果この様だ」
上体を起こしながら呻く磯部総理に、同じく上体を起こしながら軽く説明をする磯部大臣。
浅野は険しい表情で磯部大臣を見る。
「ネットの匿名性を守れ、か…神の前にその匿名性とやらは有効なのか?」
「そんなわけ無いでしょ。配信時に神が実名と住所を明かしたこともありますよ。その事を分かっているから掃きだめのような所で愚痴のようにあの子を馬鹿にしたり貶めていたんですよ」
「だろうな。しかしそれが溢れ出たと」
「未だに自分が選ばれればこんな酷いことになる前に世界はよくなっていたとか大言をほざく連中が大勢いますからね。しかしそれをいちいち処罰するようなことはできない。ただしそれは法の範疇であり神々に通用するわ───」
磯部大臣はため息を吐き天井を見上げ、固まった。
『やっほー』
「っ!?…祓戸様!?」
「「!!?」」
2人も慌てて天井を見上げる。
そこには配信映像と全く同じ光景が貼り付いていた。
『流石にそっちに行くわけにはいかないから映像を投影しているよ』
「あ、はい」
間の抜けた返事をする磯部総理に祓戸はクスリと笑うと、表情を消し宣言を下す。
『次代の巫女・神子を選抜します。ただし、少しでも邪な心を持つ者が挑めば1次試験の時点で八雷神に焼き殺されると思ってください。それくらい命懸けの試験です。
試験は1月後に行われ、1次試験は八雷神による邪心判定。2次試験は伊邪那美命による神威を受けても何事もなく立てるか。3次試験はウェスタ神含めた異国の神々を前に祈念を捧げ先代神子岩崎友紀と同等の力を捧げられるかの確認。
そして最終判定は神々の大法廷前に立ち立派に饗応をしてのけることです』
「「「無理です!」」」
即答だった。
清々しいまでの不可能宣言に祓戸は苦笑する。
『だよねー。でもね、もう手遅れだよ?これは全世界各国の標準時間7時にそれぞれに対して同じ事を発信する。
その時点で岩崎友紀は巫女から先代巫女となりあの子の巫女としての力については全て無くなるからそのつもりで。
そして例え次代が居なかったとしてもそれは元に戻さないそして彼に対して一切の悪意ある行為を禁ずる…
まあ、この公示の際に1000万人の人が次代巫女を希望した場合のみこの宣誓は効力を発揮し、即時実行されるという感じだから。
あと、参加資格はエセでもなんでも神聖職者であることというもの凄く敷居の低さだよ!喜んで!』
「自ら破滅へのボタンを押させるという事ですか」
「というよりも饗応も初めは彼、自腹だったらしいんだが?」
『僕達のことに気付いていない頃から神へのお供えと感謝の念は絶やさなかった子だよ?』
「本当に破滅へのボタンを押させたがる神様だ…まあ、あの子を守るための防衛策だろうが…世界全人口から考えて1000万人か…頼みますからデメリットはきちんと強調してくださいよ」
『ちゃんと最後にしっかりと伝えるよ。ここで言わなかったこともね』
祓戸はにこりと微笑み、その映像は消えた。
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