555話 兄さんの問いと、僕の答え
にぃに…兄さんが僕の前に座る。
「3つだけ、聞きたい」
「…うん」
「一つ。儀式の際の消費を甘く見ていたのか?」
あー…やっぱりそこからかぁ…
甘く見ていた…と言うわけではない。
「兄さんも居たから分かるでしょ?消費はそんなに無かったはずなんだ。でも」
「誰かが今回の分離作業中に儀式経由で介入しようとしてきたのか」
もの凄く険しい顔をする兄さん。
「ここの位置を調べるためだと思うんだけど…地球の神様って、ここのことほとんど知らないと思うんだ」
少なくとも神域関係者であれば態々逆探知まがいのことはしないと思う。
兄さんは右手で口を隠すような格好で目を閉じる。
「───ああ、これは…犯神は復活したばかりのクソ爺か」
えっ?
「知識に貪欲なクソ爺がこちらの儀式をこれ幸いと逆探知を仕掛けてきたんだろう。儀式終了の行為を簡略しなかったか?」
「あっ…うん。お姉さんが釣れたから簡略した」
やっぱりすぐ分かるんだ…
「対価不足を理由にエネルギーを奪いながらその流れを探知しようとしたんだろうが…お前からであればロスは少なくて済むが、他はかなりのロスになる」
それってまさか…
「神様からも?」
「ああ。お前が繋がなければロスが発生する…あの時はお前と奉納貨から大量の力が出ていたが…あのタイミングは最悪だろう…」
それで無駄なエネルギーを取られたと…でも、ここにはその神様来てないよね?
「恐らくだが、場所の特定は無理だし、もしかすると爺は逆流現象でショック死している可能性もある。まあ、ここには四重のセキュリティがある。そしてもしそれらを突破してここに来たら…お前の部隊や箱、そしてお前の娘達が相手をするだろうな」
あ、オワタ…一番怖いのは箱ですが。
「一つ目は分かった。次の質問だ」
「うん」
「大丈夫と言いながら、死ぬ可能性も低くは無いと思っていたな?」
「うん。ただ、それを何とかするための保険…は邪魔されて不発だったんだけど、お姉さんは確実に助かるような用意はしていたよ」
例え耐えられても魂の欠落はどうしようもないし。
「───と言うことは、自分の現状に気付いていたという事だな」
あ、バレてる!?
兄さんは僕の魂の状態まで分かっていたみたいだし…言い訳出来ないっ!
「…はい」
「そうか。最後に…佑那の言っていた「2回も兄さんのあんな姿」の意味は何だ?」
「………それは、僕が一度死んだからだよ」
兄さんが目を見開いた。
「正確には死んでなかったかも知れない。ただ、病室で佑那に看取られて僕の心臓は止まった。それはしっかりと覚えている。
ああ、これが死ぬって事なのかなあって…そう思っていたら衝撃と共に僕は目を覚ました。
僕が目を覚ました原因は佑那が幼いながら心臓マッサージの真似事をしたからで。
恐らくあの時、佑那は9歳…10歳になっていたかな…初めて佑那が気を使ったんだろうね。あの時確かに僕は死んで、佑那に蘇らされたんだ。多分本人気付いていないけど」
「───成る程。そのせいか」
「えっ?」
「お前の魂が変に固定化されているのは佑那の気が邪魔をしていたのもあるだろう」
「はっ?…いやいやそんな…え?まさか…」
「……命を救ったのは佑那のソレかも知れないが、邪魔をしているのも佑那の力だ」
「oh……oh…」
それは何と言って良いのか…もしかしてだけど…
「金桃が…無駄だった?」
「いや、無駄ではないが…今回に関しては、無駄だったな。しかし…佑那の気を除去…分からないレベルで欠落部分を………んっ?今は、無いな」
えっ?まさか!
「今回も微量の欠損があったはずだ。その際にその部分が削がれた可能性がある」
うん。兄さんのその微妙な顔、多分僕も同じ顔してるよね…
呪い?を佑那が一度は食い止めて、その後神様とお姉さんが呪い?の解除と欠損部を保護…そして今、お姉さん復活の際にガーゼのように覆われていたソレが削れて…うん。
「まあ、問題無かったわけだし」
「…はぁ……、そうだな…」
兄さんが深い、深いため息を吐いた。
「あとは時間を掛ければ完全に癒えるだろう。お前のやったことは周りに迷惑を掛けたかも知れないが、それはお前が決めて行った結果だ。ただ、迷惑の8割は爺のせいだ。それは必ず伝えるように。
『一部の神が大切な儀式を邪魔した結果、5日ほど意識不明でした』と」
あ、ソレ絶対言わないと駄目なんだ…
「あと、もしお前が死んでいたら、何人自害していたか考えてみろ。そしてマイヤは兎も角、リムネーは確実に消滅していたぞ」
兄さんはそれだけ言って僕の頭を乱暴に撫でた。
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