554話 妹からの泣き言と、ミツルギ姉様から苦言
佑那が泣いている。
僕に抱きついて大泣きしている。
「兄さんの馬鹿ぁっ!2回も、2回も兄さんのあんな姿見たく無いっ!」
あー…うん。あの神様にあう直前、最期を見たのは佑那だったなぁ…
いや、死んでなかったけど。
ただ、あの神様が来なかったら僕は死んでいたわけで。お姉さんが僕を助けてくれなかったとしても僕は死んでいた。
だから、ゴメンね?佑那。
僕はお姉さんを復活させたことを後悔していないよ?
でも、佑那を泣かせたことは───
「佑那、泣かないで?」
佑那は少しだけ体を離し、僕を見る。
「泣かないで」
頬に唇を落とし、目元にも唇を落とす。
「佑那が泣いたら、僕も悲しいから…」
「にぃさん…ゆーにぃさん…」
ああ、結局また泣かせてしまった。
どうやらほとんど寝ていなかったようで佑那はそのまま眠ってしまった。
白城さんが佑那を抱き上げてすぐ隣の布団に寝かせてくれる。
「ありがとう白城さん。ご迷惑おかけしました」
「本当です。今回は流石に肝が冷えました。メリアも動揺しすぎてミスを連発していましたよ」
白城さんはそう言いながら僕の頬をそっと撫でる。
「ご帰還、おめでとうございます」
「ただいま、白城さん。あと、防御魔法?って、神様を止めることも出来るんだね…しかも三柱分…」
「私くらいですよ」
「そっかぁ…」
白城さんがスッと僕から離れ、ミツルギ姉様、石長比売様、アディエーナ様が飛び込んできた。
石長比売様は何も言わず僕を背中から抱きしめている。
アディエーナ様は正面から抱きついてきてワンワン泣いている。
そしてミツルギ姉様は…少し困ったように一歩離れた所で苦笑していた。
「出遅れてしまったか」
「踏み出す時に躊躇っていましたもんね」
「ああ…今回の件は今まで生きてきた中で一番心がやられたよ」
「いやそれはどうなんでしょう…」
「それだけ私達はゆーくんに依存しているという事だ」
「それはそれでどうなんですかねぇ…」
苦笑してしまう。
「ゆーくん。何故あのタイミングでやろうと思ったんだい?」
「僕のお仕事がほとんど終わったからです。神様方があちらへ移動し、力ある者達を集約してダンジョンに対する楔にして…
後の世、外にモンスターが跋扈しても良いような要塞島を、移動式要塞を用意したんですよね」
「……」
「他にも何かやろうとしている事はあったと思いますが、僕が関わっていて大きな役目はこれくらいかな、と」
「……間違ってはいないけど、ゆーくんは自身のことを過小評価しすぎだよ?」
「えっ?そうですか?」
「君が意識不明となっただけでこの世界の神々の統率が乱れに乱れた。私達もだ…ゆーくんの存在はそれほどまでに精神的支柱だったんだ」
「いや、それだとマズイでしょ神様…」
「ゆーくんも神だからね?それに、さっきから死ぬ前提で話をしていないかな?」
「最悪それも織り込んでいましたが…今回直前に行った神事で力を想定以上に取られてしまったせいで…こうなってしまいました」
「「「んっ?」」」
あ、ちょっと神様方?今、開けっぱなしのこの部屋の温度が下がりましたよ?
「島に対しての浄化儀式は想定通りだったのですが、その後の技術再伝承の依頼奏上を行った時、予想を大幅に上回る消費をしてしまい…」
ああ、石長比売様もアディエーナ様も抱きしめるのがキツくなってきてます…息苦しいっ!?
「それでも止めなかった理由は?」
「全てのタイミング的に…あの時しかなかったんです」
「…そう…儀式のログを確認させてもらうから、私は少し失礼するよ」
ミツルギ姉様はそう言って席を立つ。
「───ミツルギ姉様に、嫌われちゃったかな…」
「いえ、あの怒りは…強欲な神への怒りでしょう」
僕の呟きに石長比売様が静かにそう答える。
───それはそうと、そろそろ離れていただけませんか?お二方…
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