517話 先手、無関心 後手、策動

 なんか、すごく重い空気なんですが?

 僕、なんかやっちゃいました?

 キョロキョロと見回す。

 磯部さんと目が合った。

 ───お前さん、さては現状を正しく理解してないな!?

 うんっ!

 ───保護者ぁぁっ!頼むからこいつに正しく教えてやってくれぇぇぇっ!

 目だけで頭を抱えるようなイメージを送るとは、磯部さん、恐るべし!


「巫女にゃんこ〜dead end〜に、このままだとなっちゃうんですよね」

 今まだ黙っていた女性がボソリと呟いた。

「澪ちゃんっ!?」

 ビクゥッッ!

 何名かの記者が過剰に反応し、涙目になった。

 そして全員が僕を見る。

 いや、僕を見られても…

「曲を制作していただいた方が自棄になったらそうなるかもしれませんね…あっ」

「どうした?」

 ものすっごく嫌な予感がした。

「磯部さん。物凄く、マズイかもしれません」

「何がマズイんだ?」

「あの配信、この世界の神々も見ていたんですが、別の世界の神々も見ていたんですよ…」

「えっ?」

 うん。本部の神様がかなりの数…待ちわびているんだよなぁ…

「…巫女にゃんこデッドエンドが流れたら…うん。この世界もデッドエンドかもしれません」

「……死なば諸共か。今の言葉で酒精が完全に飛んだ。そうか…日本のメディアが世界を滅ぼすかぁ…あの件以降劣化が過ぎると思っていたが、テロリストになっていただけだったか…」

 磯部さんの長い長いため息がブース内に響いた。

 ───脳内で組み上がっているバージョンをみんなで踊るとかでも良いかな。

 僕はそんな事を思いながらボーッとみんなを見ていた。



 SIDE;祓戸


「拙いっ!」


【どったの?】

【別の世界の神々て】

【いやぁ…それはマズイのでは?】

【そんなことよりデッドエンド版は心を殺しに来るので止めて戴けませんか!?】


「マズイマズイ…計画を二段階前倒しにしないと本当に世界が無くなっちゃうっ!」

 祓戸には焦りの色しかない。


【計画とな?】

【何を企んでいるのかしら?】

【参謀ムーブは似合わないですよ?】

【いや、その大人の女性だったら似合わ…ないな】


「ちょっと!?」

「ふいー…ただいま!」

 コメント欄にツッコミを入れている中、ユグドラシルが姿を見せた。

「あ、樹神殿…どうでした?」

「襲撃予定者はガッツリだったけど、しゃっちょさんは俗物の煮込みだったよ」

「それはそれは…ってそんな悠長にしている場合じゃないんです!」

「えっ?何事?」

「このままだと巫女にゃんこ奉納歌はデッドエンドになっちゃうんです!」

「いや何故?」


 ~~祓戸説明中~~


「あーーーーーー…まあ、そうなる可能性もあるけど、確率は低いかなぁ」

「えっ?」

 事も無く言うユグドラシルに祓戸は呆けた顔をする。

「私も指示を出しているから、その通りであれば問題はそんなに無いよ」

「えっ!?」

「基本策は3段構えにしなきゃ」

 ユグドラシルはニヤリと笑う。


【うん。策士の顔だ】

【腹黒笑顔助かる】

【幼女姿でその笑顔やったら確実にメスガキですよね】


「…君達余裕あるなぁ」

 リスナー達の変わらない様子に祓戸とユグドラシルは苦笑した。


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