518話 先手、キッチン案内 後手、プチ繁忙
報道陣のスマートフォンが振動する度に皆さんの顔色が悪くなっていく。
特に顔色が悪いのはテレビ関係の人。
一番ごついカメラ機材を持っていた。
次に新聞記者さん。
週刊誌の記者さんは余裕が───あ、目が泳ぎ始めた。
「あの、他に質問は」
・ ・ ・ ・ ・
どうやら無いようだ。
なら、お料理コーナーへ行きましょうか!
はい。やってきました神域キッチン!
いつの間にかキッチンが更に拡張されていますが気にしない!
そしてこの神域に入るなりガクブル震えている方々は見なかったことにします。
「さてさて…今日は豚の角煮と、カボチャの煮物、根菜類のゴマ和え、油揚げとネギ味噌汁、きんぴらゴボウも用意すれば良いかなぁ…」
言いながらも僕はお米を一升分研ぎ洗う。
「はい。まずはご飯準備して、と…皆さん、こちらです」
そう言って全員を食料庫へと案内する。
「こちらは五穀の神様や豊穣の神様方が作物を育て収穫した物を保管しています」
「あの、巫女様お米や麦の単位が…」
「はい。一部の穀物に関しては俵計算になっています」
「凄い量ですね…」
「これだけの量を入れられる亜空間をこの部屋に施していると言うことですね」
女性2人は驚きながらも内容量に関して話し合っている。
「まあ、これらの空間拡張は異世界の神様が協力して戴いているおかげですが…神々が対ダンジョンでの疲れを癒やすという意味でもここを用意していたのですけどね」
『………』
僕は必要な物を取りだしてキッチンへと戻る。
「さて、ちょっと気合い入れて作りますので口数が少なくなると思いますので…」
僕はそう前置きをし、本格的にお夕飯の準備を始めた。
~~巫女様本気調理中~~
「───うん。あとはゴマ和えを盛り付ければ…」
「……ええっと、巫女様?」
「はい?」
「本職では、ないんですよね?」
「本職は協会の特殊事務です」
「自分は元々バラエティーにいたのですが…有名料理店やホテルの料理人でもそこまで手際よくかつ流れるように動けてはいませんでしたが…それに時折食材が光って」
「いやいや…その料理人さんの調子が悪かったか、分担作業で行っていたからだと思いますよ?僕なんて素人家庭料理ですから…それにスキルを使って圧力調理やテーブル代わりやら横着していますし。食材が光ったりしたのは祈りを籠めたせいかと思います。最近は光るようになってしまって…」
僕が苦笑しながら記者さんに答える。
「ゆーちゃん!本部の神様方へ持っていくクッキー作って!なるはやで!」
おっと、ゆる姉様が無茶振りしてきた…
「分かりましたー」
僕は食材を取りに急ぐ。
撮影している報道陣の方々は「マジで!?」という顔をし、女性2人は「いや無理でしょ!?」という驚愕の表情で固まっているけど…僕はそれどころじゃないんだな。
「済みません、緊急でクッキーも作らないといけなくなったので…フィラさん、箱庭に行ってりんごを10個から16個摘んできてください!」
「了解よ」
「師匠、手伝うッス」
「下準備だけお願い。林檎のタルトを7~8個追加で作るよ!」
「どうしてッスか!?」
「多分巫女にゃんこ奉納歌の件で上位世界の神様方へゴメンナサイしに行くために作って欲しいだけだと思うから追加で…2個はここの神様方の分だけど」
「了解ッス!クッキーの分量はいつものッスか?」
「うんっ、まずはそれで」
忙しくなってまいりましたよぉぉっ!
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