768話 僕らのあんパン戦争
『速報:磯部大臣、胃がクラッシュして倒れた模様』
『磯部大臣マジで激務が過ぎんか?』
『全大臣の中で尤も前線で働いている男』
『縁故採用とか色々ボロクソに言った人は謝って?』
『ごめんやで』
『いやいや、激務であれば協会の課長や部長さんの方がヤバいんだが?』
『具体的には?』
『部長はこの数年全体で休日を取ったのは7〜8日程度』
『えっ?死なない?』
磯部大臣に何か差し入れをあげた方が良いかなぁ…あんパンとコーヒーとか?
『お父様、申し訳ありませんが私はそろそろ…』
リムネーが時間を見て申し訳なさそうに言う。
「あっ、御免ね。行ってらっしゃいリムネー、お勤めがんば…箱庭経由だよね?」
『はい。そうですが…』
「行く序でに佑那に声を掛けて欲しいな」
『分かりました。スタジオへの呼び出しと伝えておきます』
そう言ってリムネーは姿を消した。
「兄さん何かありましたか?」
佑那が少し急いだ様子で駆け込んできた。
「佑那にお願いがあります」
「なんでしょう」
「空きペットボトル買ってきて。10本くらい」
「…えっ?」
まさかお使いを頼まれるとは思っていなかったのか戸惑った顔をする。
そこで磯部大臣が岩崎案件で胃がクラッシュしたらしいと伝えると「あ~…いつものですか」と佑那すら普通に頷いていた。
磯部大臣は泣いて良いと思う。
「で、神兵さん達とお散歩序でにと思ってね」
「ああ、午後からは講義があるので昼には…まあ、2時間で戻って来ますので」
「ちゃんと神兵さん達と行くんだよ?」
「久しぶりの東京見物の方とジャンヌさんで行ってきます」
東京見物?誰だろ…でもまあ、渡す物は渡しておこう。
「あ、じゃあこれお駄賃込みで」
佑那に万札を2枚渡す。
「えっ?こんなにですか?」
「3人で楽しむならこれくらいあった方が良いかなぁって」
「前に追加でもらいましたよ!?」
「あって困るものではないでしょ?」
「まあそうですけど…一応私も億万長者ですよ?」
「大学生なのに兄のアイテム売却利益でアイテム成金という」
「悪い言い方止めてくださいませんか!?事実ですけど、事実ですけど!」
『うわぁ…巫女様が良い笑顔で佑那ちゃんを苛めているぅ』
『グイグイ攻めるなぁw』
『巫女様がいたずらっ子のような笑み…イイネ!』
『閃いて通報した!』
『セルフ過ぎんか?』
『その蠱惑的な笑顔、センシティブ!』
佑那はブツブツ言いながらスタジオを出て行った。
「と言うわけでこれからあんパン作りのため配信終了となります」
『あんはこしあん?粒あん?』
『おっとそれを言ったら戦争待ったなしだぞ?』
『粒あん一択だろ?』
『あんパンって粒あんパンの略じゃないの?』
『ほら、変な火種が!』
『人は愚かですね…私は両方のあんパンを愛します』
『そしてうぐいすあんと言う邪宗は消えることと───』
『ナンデや!細々と生きていてもええやろ!邪宗なんて言われると心外だだ!』
「喧嘩しないでください!…うーん、とりあえず4種類のあんパンを作ってみます。少し時間が掛かるので配信はこれにて終了です」
僕は改めてそう言い、配信を終えた。
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