88話 詰問~兄さんに女性の影がある件

 ちょっと確認したら、敷地も広くなっていた。

 と言うか、隣にあった契約駐車場がまるごとうちの敷地になっている。

 僕の知っている家じゃ無い…

 ごく一般的な一戸建て住宅だったのに、日本家屋が建っている…

 兄さんにメッセージを送る。

【家の前に居るハズなんだけど、家が無い件について】

【結羽人:その件について説明する必要があるからそのまま入ってきてくれ】

[巽さん。入りましょう]

「宜しいのですか?」

[はい。兄さんから入ってくるようにと]

 僕らは首をかしげながら敷地の中へと入っていった。


 おかしい。こんなお屋敷を建てるには結構巨額のお金やら時間が掛かるハズなんだけど。

「友紀」

 僕は呼ばれた方を向くと、そこには作務衣を着た兄さんが立っていた。

「おかえり。玄関はそこだ。お連れ様もどうぞ」

 それだけ言うと兄さんは玄関では無く中庭の方へと去っていった。

 ………ん~?

「姫様?」

[違和感が凄い。何というか、コレジャナイ感が凄い]

 悪意や騙しているって感じでは無いし、神域とも違う…んーっ!判断材料が足りない!

 慈母の眼を使って周囲を確認しても特に問題は無い。

[巽さんは、何か違和感ない?]

「違和感ですか…空気が清浄であること以外は特に…」

 清浄…結界に入った感覚は無かったんだけどなぁ…

 なんて事を考えながら動かずにいると、

「合格。妖精の迷い粉に惑わされないようだな」

 兄さんが玄関から普通に出てきた。

 それと同時に家の外観が変わり…自分の知る元の家へと変わった。

[あー…やっぱり。空間と認識を弄っているのかぁ…]

「そんな…大規模偽装!?ありえませんよ!?」

 愕然とした表情の巽さんに兄さんは首を振る。

「大規模では無いぞ?」

[意味が、分からないんですけど…あと、隣の駐車場、いつからうちの敷地に?]

「それらを今から説明する。まあ中へ入れ」

[兄さん]

「ん?」

[さっきの人、誰?]

「あー…それも含めて説明する」

 兎も角、僕達は家の中へと足を踏み入れた。


「姉さんおはようございます!」

 家の奥からテンション高めの佑那が来た。

「あっ、お客様もご一緒でしたか」

「ああ、お気になさらず。私は姫様の護衛ですので」

「ひめ、さま?ご、えい?」

 うーん…最近その視線よく受けるなぁ…まさか佑那から受けるとは思わなかったけど。

「まあ、あんな大々的にやっちゃったら、護衛も付くよねぇ…」

[ちなみに、巽さんは前から職場の同僚だよ?]

「なんで!?」

「姫様と少しでも長い時間を共に出来る事を光栄に思っております」

「とうとうメジャーな狂信者が…」

[あ、それと]

「なに?」

[香椎のおじさん、何故か協会の食堂でコック長してるよ]

「なんで!?」

 なんでだろうねぇ…僕も知らないよ。


 リビングに入ると兄さんと平安時代の女官姿をした美女がいた。

「誰!?」

[いや、何故佑那が知らないのさ]

「えっ?」

「お初にお目もじ仕りま「普通に喋れ」…私、玉藻と申します」

「「!?」」

 絶句する佑那と巽さん。

[神様方の次は大妖の一角が来たんだけど?どういうこと?]

 兄さんを見る。

「昨日倒れている所を拾った」

 あ~~~~~~~~~…兄さん。マジ兄さん。

「気配も性根も綺麗だぞ?」

「綺麗だなんてそんな…今から床をご用意なさいますか?」

[飼い主さん飼い主さん。ちゃんと躾してくださいね?]

「元気になったら山に返そうかと思っていたんだが…」

「「「鬼ですか!?」」」

 佑那、巽さん、玉藻さんがハモった。

[仲いいなぁ…いや佑那。兄さんの性格上野生動物を自然に戻そうとするのわかるだろ?]

「いくら何でも大妖玉藻の前を狐扱いするなんて思わないですよ!?」

 兄さんの規格外な思考に慣れてよ…


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