903話 大物主様のお礼


 僕の配信を終え、切らずにゆる姉様方にバトンタッチをする。

「僕たちはご飯食べに来ただけだから宴会が終わり次第撤収予定だよぉ~」

「拠点襲われたら困るからねぇ~」

 お二人が「「ねー」」って話し合っているけど…一応、声は掛けておこう。

「?大丈夫ですよ?白獅子さん達にお願いして4名ほど待機して貰っているので」

「「えっ?」」

「重装救命官と2マンセルで動くのでまず間違いなく強いですよ」


『番犬どころの話じゃねぇw』

『1頭でも収集つかない強さなのに4頭て』

『まさかちーくんいますか!?』

『ちーくんis誰?』

『お前さん、協会関係者だな!?』


 うわぁ…なんかカオス。あっ、早くご飯食べないと。


 2時間ほど騒ぎお開きにしようとしたら大物主様から女将さんを呼ぶよう言われた。

 女将さんと付き添いできた料理長は宴会場の手前で膝を突き一礼する。

「おお、女将か。それと料理を作った者か。此度の宴、急ぎ働きをさせたそうだが、そうとは思えぬ出来映え、大変満足しておる」

「「ははぁっっ!」」

「我が名は大物主神、願いがあるのであれば聞こう。ただ、あまり大きなものは力を失って久しいので分からんがな」

 そう笑う大物主様に対し平身低頭したまま女将さんは何も無いと言う。

 ただこの地を守っていただけている。それだけで十分だとも。

「ふむ…心からの言葉のようだな…となると…んっ?天之御中主様?」

「金杯でもあげたら?」

「ああ、それも良いですな。神気を少し混ぜれば邪気払いにもなりますし…しかし、巫女のおかげで我々も随分助けられましたな」

「ええ。あの子にはどれだけ助けられたことか…いや、あの子の兄にも」

「ああ…アレは無茶苦茶ですからね。アレを人というのには無理がありすぎる」

「我々は彼の功績を羨むことすらできない…当然、助けることも」

「まあ仕方ないですよ。次元が違う…我々は我々の出来ることをするだけです。おっと、これで良いですかね」

「良いんじゃないかな?」

 コトンと女将さんの前に直径15~6センチ程度の金盃を大物主様が置いた。

「その金盃は悪気や邪念を寄せ付けぬよう我が神気を混ぜて作った代物だ。それをこの館に置けば100年から200年は卑しき心の者や悪霊の類を寄せ付けぬであろうよ。売るも飾るも好きに使え」

 そう言ってふすまを閉めた。



「えっと、あの金の盃は?」

 僕が気になって大物主様に聞くと何でも無いことのように答えて下さった。

「ああ、あれは二十両を合わせあの形に変成したのだ。まあ、それ以外にも沈丁花の香りを物質化して銀の部分に付け加えてある。部屋に置いておけば香木のようにゆっくりと香るだろうな。その香りが消えれば効果が切れた合図だな」

 香りの物質化?…流石神様と言うべきか。

 後そこはかとなく防虫剤的な…まあそれ以上言わない。

「香木かぁ…幾つかあるけど、あまり興味ないからなぁ」

「神域の農業部隊が興味を持ったらやりそうですがね」

「………あの子達、なんでああなっちゃったのかなぁ…今なら並の神ならねじ伏せられるよね、アレ」

 天之御中主様。こっち見ないで下さい。

 僕は犯人ではありませんので。


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