364話 幼女とおやつ

「お や つ!」

 邪幼女神様…ハヴァスターイ様が来たのと巽さんがケーキを買ってきたのはほぼ同時だった。

 巽さんからケーキの入った紙袋を受け取り、ハヴァスターイ様へ裂け目越しに渡す。

「やたっ」

 ハヴァスターイ様大はしゃぎ。いやはしゃいでいるようには見えないけど…

「タイムさんがそっちにちょっとした支援物資持って行っていると思いますが…」

「来てる」「ッシャ!」

 あ、タイムさん来た。

「ってうぇえええ!?ナンデ!?ご主人ナンデ!?」

 何か、無茶苦茶焦ってません?

「いや、裂け目が出来ていたから何だろうって見ていたらね…」

「そうッスか…まあ、帰る手間省けたんでいいんッスけど…これ、どうするんスか?と言うよりもこれ大丈夫ッスか?」

「こちらで塞ぐから大丈夫」

 背後のゲートからゆる姉様の声が聞こえた。

「そっちの状況は?」

 ゆる姉様がハヴァスターイ様に問いかける。

「押し返している。もらったアレがあればほぼ押し返せると思う」

「うちの連中は回復アイテム知らずッスからねぇ…」

 ええええ?

 ケタケタ笑うタイムさんと呆れた感じで同意するハヴァスターイ様。

「2割やられた理由も喜々としてノーガード迎撃したからだし」

 それで押し返せている事が恐ろしいんですが…

「回復させれば5分は戦線復帰できるから酷いことにはならない」

 使い潰す気満々だぁ…どんだけ脳筋戦闘集団なのさ!

「だけど、足りない」

 ハヴァスターイ様の言葉に僕は「少しお待ちください」とゲートに入る。

「ぅえ?どうしたの?」

 驚くゆる姉様。

「茶葉と笹を取ってこようかと」

「ああ、なるほど…」

 急いでゲートを開けて箱庭に入り、茶葉十数枚と稚児笹っぽいモノも十数枚摘み取って戻った。

「はい。どうぞ」

「……いいの?」

 買い物袋に入れたそれらをハヴァスターイ様は受け取る。

「これで頑張って」

「他のみんなが頑張る」

 この邪幼女神様ブレない…っ!



 裂け目が消える。

「苦労して行ったのに簡単に戻ってこれたのは…なんか微妙ッス」

 裂け目からひょいっとこちらに来たタイムさんは微妙な顔で消えてしまった裂け目のあった空間を見つめる。

「いやいや…かなりの異常事態だからね?とりあえずみんな戻って来て」

 ゆる姉様が向こう側から呼んでいる。

「戻ろう?」

 僕は巽さん達にそう声を掛け、ゲートへと足を向けた。

「姫様、私はあの怪猫について課長に報告してきますので失礼致します」

「あ、はい。お願いします」

「ちゃんと休んでくださいね?」

 巽さんが釘を刺してきた。

「えっと、配信をして夕飯を作ったあと、早めに休ませてもらいます」

 と言うに留める。

「早めに休んでくださいね?約束ですよ?信じますからね?」

 何処まで信用無いのかなぁ!?

「では22時に寝るようにアナウンス致しますね」

 フィラさん!?

「お願いします」

 巽さんがフィラさんに頭を下げ、去っていった。

「───僕、そんなに信用無い?」

「この件に関しては、一切信用ありませんね」

「そうッスね」

 ……マジかぁ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る